このつぶやきを書いている時点で、未だ次期日銀総裁は決まっていません。流石に困ったものです。困ったのは日銀総裁が空席になるかも知れないという事実よりも、日銀総裁を決められない政治プロセスであることを、政治家の方々は認識しているのでしょうか?もし所謂”日本売り”が行われるとしたら、それは総裁空席だからではなく、日本の国内政治力の欠落の所為だと思います。
しかし私は、このことを理由に日本売りは起きないと思っています。世界的に見て圧倒的に低い金利状況の中では、どうせ日銀がいじれる金利の幅、即ち金利政策の幅も、かなり限られていますから、総裁がいなくても大したことはありません。日本国内だけを考えれば、暫く空席でもいいのではないかと思えるほどです。しかし本当の問題の所在は、日本でなくて世界だと思います。これだけ世界の金融市場が深く且つ複雑に繋がっている環境で、各国の金融当局者と常にスムースにコミュニケーションが取れなくてどうするのでしょう?
世界の金融市場の問題を見ると、流動性の供給が未だ未だ必要で、今、大規模な流動性供給が出来る国は日本しかないと思います。今こそ日銀は、日本のためでなく、世界のために、流動性供給を検討すべきだと思いますが、総裁空席ではそう云った視点も持ち得ないでしょう。今の状況は、あまりにも天上天下唯我独尊、世界の経済・金融社会の一員としての自覚・認識が足りないのではないでしょうか?少なくともそう見えてしまいます。痴話喧嘩を止めるべき理由は、日本のためだけでなく、世界のためであると、そう思って貰いたいですネ。
- 松本 大
- マネックスグループ株式会社 取締役会議長 、マネックス証券 ファウンダー
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ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社を経て、ゴールドマン・サックス証券会社に勤務。1994年、30歳で当時同社最年少ゼネラル・パートナー(共同経営者)に就任。1999年、ソニー株式会社との共同出資で株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)を設立。2004年にはマネックス・ビーンズ・ホールディングス株式会社(現マネックスグループ株式会社)を設立し、以来2023年6月までCEOを務め、その後代表執行役会長。2025年4月より会長(現任)。東京証券取引所の社外取締役を5年間務め、政府のガバナンス改革会議等に参加し、日本の資本市場の改善・改革に積極的に取り組んで来た。ヒューマン・ライツ・ウォッチの副会長を務め、現在は米国マスターカード・インコーポレイテッドの社外取締役。東京大学法学部卒業。