ノリックこと阿部典史(のりふみ)さんが、一昨日交通事故で亡くなられました。享年32歳でした。ノリックは世界的なオートバイ・レーサーで、500ccクラスの世界選手権(GP)で3勝を挙げた、日本有数のレーサーです。バイクの世界ではイタリア人のヴァレンティーノ・ロッシが、現役且つ史上最高の天才レーサーであることは先ず間違いなさそうですが、若き日のロッシがノリックの勇敢なライディング・スタイルに憧れ、自らを「ろっしふみ」と呼んでみたり、自分のバイクに「Valentinic(ヴァレンティニック)」と描いたことがあるのは有名な話です。
ロッシは「ノリックは危険を恐れず、そのレーシング・スタイルはクレイジーだけど、僕にとってはヒーローだ」とまで云ったことがあります。そんな不世出のライダーが、一般道で、事故死してしまいました。本当に残念なことです。原因は、片側二車線の一般道、Uターン禁止区域で、右車線をバイクで走っていたノリックの前に、左車線・前方を走っていたトラックがいきなりUターンすべく右に旋回を始め、ノリックが避けきれずに衝突したようです。確かにこのような状況はあり得ますし、右車線車のスピード、中央分離帯の有無・形状、対向車線の状態如何によっては、中々回避しにくいものです。しかしノリックほどのレーサーが・・・。
世界一速い日本人を失うことは、本当に寂しいことです。誰よりも先へ、先へ行く。遮るもののないところへ、リスクを取ってでも飛び込んでいく。それがGPレーサーの哲学でしょうか。ノリックは事故現場では意識もあり、言葉も交わせたとのことです。公道の上では最後に眼前を遮られましたが、意識果てる時には、ノリックの前には何も遮るものはなかったでしょうか。阿部典史さんの御冥福を、謹んでお祈り致します。