気象庁は今日から、天気予報の中で使う「宵のうち」と云う言葉の使用をやめ、「夜の始め頃」と云うらしいです。「宵のうち」は夜6時から9時の時間帯を表すために使っていたそうなのですが、『「宵のうち」はもっと遅い時間帯を表すと理解されている』と云う理由でこうなったとのこと。ふ〜ん。何か変ですね。

子供の頃、夕方の西の空を眺めるのが好きでした。遊んだあとに家に帰る途中によく見た「宵の明星」は、夕焼けが未だ終わるか終わらないかのうちに西の空に見える金星のことです。やはり小さい頃から好きだった蘇軾の詩、

「春宵一刻値千金 花有清香月有陰 歌管楼台声寂寂 鞦韆院落夜沈沈」

は、確かに詩の最後では夜もかなり遅い感がありますが、歌い出しは夕方であり、それが段々と更けていく、時間に幅のあるイメージが私にはします。古今集・深養父の

「夏の夜は まだ宵ながら 明けぬるを 雲のいづこに 月やどるらん」
これは流石に宵は深夜の気もしますが、明け方の雰囲気と同じほの明るさの時間帯からワープしたと考えると、宵は夕方の気もします。いずれにしろ、「宵のうち」は夜6時から9時の時間帯を表すには適切でないと、使用禁止にすることでもない気がします。言葉は完全ではなく、使われる中に意味とイメージを育てていくものだと思います。風情のある言葉は、大切にしていきたいですね。