ネック、即ち律速段階は、思い掛けない所に潜んでいたりします。例えば東京→NY。飛んでいる時間は、技術の進歩と共にぐんぐん縮められてきた訳ですが、入国管理を通る時間は、いつになっても殆ど変わりません。あれだけの技術とお金を、空を短く飛ぶことに使いながら、空港内のほんの数メートルを移動することに関しては、恰も殆ど興味がないようです。

或いは、並列に数多くのブースを作ることによって律速段階を取り除いているようでも、肝心の入国管理官の数が全く足りなかったり、或いは入国管理官の処理速度が、それまでのジェットに対していきなり尺取り虫級になったり、まぁそんな感じで律速段階となる訳です。そう云えば曾て米系投資銀行に勤めていた頃、NYでのビジネス・ディナーに間に合わせるために敢えて1本早い便で東京から飛んだ時は、入国管理に数百人のアフリカ人が居て、通過した時は既にデザートも終わり、ディナーどころか顔を見ることすら逃したこともありましたし、やはり同様に重要なビジネス・ディナーがNYにあるので、出張先のロンドンからコンコルド(!)で移動しようとした時には、空港に向かう渋滞で遅れ、最後は機体を数メートル目の前にしたカウンターで、「もうダメよ」と云う驚愕の発言によって遮られ、結局NYに着くのが7時間ほど遅れてしまったり、常にネックは最もローテクな場所に隠されているものです(因みにこのせいで、私の一生に一度のコンコルド体験は、幻に終わりました)。
友人の結婚式に出るために一日早い便でNYから東京に帰ろうとしたら、やはり機体数メートル前のカウンター近くで電話をしていたら、なんと置いて行かれてしまったこともあります。これはネックは私の中にあったと云うべきでしょうか。このような「ネック」は、移動だけでなく、組織の運営や、朝出動するまでの間の一連の作業の中など、日々の動作の中に、常に、そして多く、放置されています。入管に文句を持つよりも、他山の石としなければいけませんね。