私は浮世絵がそこそこに好きです。私は美術館や博物館へ行くのが好きで、それなりに美術品もかなりの質量を見てきたと思うのですが、浮世絵に関しては、さほど美術館巡りはしていません。その程度に好きな訳です。

しかし一方、美術品は先ず買ったことがありませんが、浮世絵だけは何度も買ったことがあります。そしてそれは全て誰かへの、特に外人さんへの、プレゼントでした。浮世絵は江戸時代の大衆文化、まぁ現代で云えばグラビア本のようなもので、堅苦しいものではなく、画集として、和本で多く売られていました。そしてひとつの本から、数十の浮世絵が採れます。だから実は大して高くないのです。昔から外人さんへのプレゼントに困ると、はたと神田へ行き、よく知っている古本屋で浮世絵を探します。上記のような、本から採り出されたものですが、もちろん本物です。

気に入ったものを見つけるとすかさず購入し、そのまま近くの額縁屋へ行きます。先ず額縁を選び、次に絵を押さえるために額と絵の間に存在する、スペーサーと云うか紙の内額(マット)を選びます。この紙の色、風合いが中々肝で、これが旨くキマルと、あら不思議、浮世絵はとても高価な美術品に様変わりします。その江戸風な雰囲気と、知識と、目と、趣味で新たな価値が創出されるプロセスが好きで、しばしばたったひとつだけのプレゼントを創りに行きます。どれひとつとして、私の手元には残っていないのですが、いつもとても喜んで頂けるので、その経緯が私にとっては財産になります。忘れたくない、密かな楽しみです。