「ゆく河の流れは絶えずしてしかももとの水にはあらず」とは方丈記の出だしです。当社にはオフィスが二ヶ所ありますが、一つは東京駅のすぐ側、そしてもう一つは隅田川沿いにあります。私は川の流れを見るのが好きで、このオフィスでは、必ず川の流れをボーッと見ます。水面の鉛色が、冷たさよりは優しさを感じさせて、落ち着いた気持ちになります。
方丈記では川の流れは無常の象徴ですが、私はそうは感じません。このオフィスから見る川の流れは、何故かいつも下流から上流に流れているように見えます。隅田川の河口に近く、かつ川の流れを見るのが夕方が多いので、ちょうど海風が吹いて、川の表面が流れとは逆向きに波を打っているのかも知れません。どうも私には、水がそこに息をしながら留まっているように感じてしまいます。丸山薫の詩の記憶が影響しているのかも知れません。いずれにしろこのような穏やかな風景は、大切にしたいものだと思います。