先週の中国株ですが、上海総合指数と香港ハンセン指数は反発、深セン総合指数は続伸、創業板指数は反落となりました。上海総合指数ですが週初はモルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル(MSCI)が中国本土A株を「MSCIエマージング・マーケット・インデックス(新興国株指数)」に組み入れるのではないかとの期待感から大きく上昇してのスタートとなりました。中国証券監督管理委員会の報道官が「MSCIの指数採用について楽観視している」と述べたことも追い風となりました。20日(火)は中国の保険当局の幹部が、業界内には「まだ大きな問題が複数ある」と発言したことが、保険業界へのさらなる管理監督強化への懸念に繋がり、市場心理の重しとなり小反落となりましたが、MSCIは中国本土A株の指数採用を決定し、21日(水)は保険株、IT関連などが買われ反発となりました。

22日(木)はMSCIの指数採用決定が引き続き好感され、中盤までは大きく上昇していたのですが、終盤にかけて失速しました。この理由は中国当局が銀行に対して、積極的な海外投資を行っている企業に対しての海外投資向け融資の調査を命じたことが原因です。調査対象リストに挙げられたのは安邦保険集団、海航集団、復星国際、大連万達集団などとなっていますが、これが市場に冷や水を浴びせた形となりました。23日(金)は特に大きな材料はありませんが、小反発となり、結局、上海総合指数は前週末比1.1%高の3,157.873ポイントで引けています。

一方、香港株も19日(月)はMSCIの指数採用に対する期待感から続伸でスタート。しかし、20日(火)は反落となり、決定が発表された21日(水)は続落となっています。これはMSCIの指数採用に対する、当初のインパクトは限定的なものになる、との観測が台頭したことが原因ではないかと思います。たとえば、ある大手証券会社は指数採用決定による資金流入額が141億米ドル(約964億人民元)に達すると予想していますが、中国本土A株市場の1日の売買代金は4,000億~5,000億元程度あるので、インパクトは限定的と見られます。また、組み入れられるのは一年後であり、それを今から株価に織り込むのは早すぎるとの見方です。22日(木)と23日(金)も前述の中国当局が銀行に海外投資向け融資の調査を命じたことから続落となり、結局、香港ハンセン指数は前週末比で0.2%高の25,670.05ポイントで引けています。

このようにMSCIの指数採用は決定されたものの、目先の株価に対する影響は限定的でした。しかし、長期的には歴史的に重要な一歩であったと見ています。今回の採用はテスト的な一歩に過ぎず、数年掛けて、徐々に本来の経済や株式市場規模に見合う組入れ比率となって行くでしょう。つまり、新興国株価指数の大半を中国株が占めるというのが最終形になっていくのではないかと予想します。新興国とはいえ、中国のGDPや中国本土A株の時価総額は先進国の日本より巨大で米国に次ぐ規模だからです。

コラム執筆:戸松信博

(グローバルリンクアドバイザーズ 代表取締役社長)