東京は今夜半から雪になるそうです。どうも節分・立春の頃は全国的に雪になる日が多い気がします。京都では節分の行事には必ずと言っていいほど雪が降るらしいですし、2月の頭に行われる受験は、雪で交通機関が遅れてバタバタするのは恒例です。この頃の雪は、寒さが堪(こた)えますが、一方で淡く溶けてしまうのが常で、冬と春の境の季節感を微妙に表していて私は好きです。

「霞たち 木の芽もはるの 雪降れば 花なき里も 花ぞ散りける」
                     (古今集春歌上巻、紀貫之)

−霞がたなびいて、木々の新芽が”張る”という”春”の訪れと共に雪が降り、まだ花の咲いていない里にも、綺麗に花が散っているようだ−寒いようでもありますが、どこかに暖かさがあり、雪を花と詠むことによって優しく豊かな雰囲気を旨く表現している、いかにも貫之らしい、技巧と情感と情景に満ちた、美しい歌だと思います。今晩の雪が、寒さではなくて暖かさをもたらしてくれる、恵みの雪だといいですね。