中国での反日運動に憂慮しています。私は多くの中国人の方と仲良くさせて頂いており、今の動きには戸惑いを感じます。中国政府の報道官の映像を見て、とても心が痛みました。日本の政府、政治家、マスコミ等の反応・対応は様々ですが、個人的には同意できるものと、違和感を感じるものとが混ざっています。同様に中国国内に於いても、全ての人が同じ考えを持っている訳ではないでしょう。しかし外交は政府と政府の間で行われ、論戦は、いずれマスコミ間で行われるかも知れません。私たち個人は、外交においては無力なのでしょうか?

こんなことを考える時、私は4年前の出来事を思い出します。マネックスで扱っているファンドの件でフィラデルフィアにあるヴァンガード社を訪問したあと、私はちょっと足を伸ばしてワシントンD.C.に行き、マンスフィールド元駐日米国大使(故人)に面会しました(マンスフィールド氏は、私がかつて勤めていた会社の顧問をしていたので、面会要請に快く応えてくれたのでした)。説明は要らないと思いますが、マンスフィールド氏は上院院内総務を16年、駐日米国大使を12年勤められた、偉大な政治家です。彼は初対面の私と挨拶を交わすなり、深々と頭を下げてこう言いました。

"As a citizen of the United States, I'd like to apologize."

私は何事かと、本当にびっくりしました。ちょうどその数日前に、ハワイ沖で米国の潜水艦が日本の水産高校の実習船に衝突した事故があったのでした。
マンスフィールド氏は傑出した外交政治家だからそう言ったのかも知れません。或いは外交というのは、官邸でもテレビの中でもなく、無数の、小さな、個人の気持ちとその表明の中にこそ存在するのかも知れません。私は後者の可能性を信じたいと思います。外交において、私たち個人が自分達を無力化しないこと、当事者としての意識を持ち続けることが、大切なのではないでしょうか。