知り合いからも社会からも袋叩きにされていたPMは、その日もそれぞれ違う弁護士とのミーティングをなんと10個以上こなしてきたとのことでした。そんな状況でしたから、PMは当然肉体的にも精神的にも疲れ果ててやつれているだろうと私は考え、会った時にどう反応すべきかを生意気にも思案などしていました。しかし目の前に現れたPMは、以前の偉大な上司の時と一切雰囲気は変わらず、颯爽と待ち合わせ場所の回転扉を通ってきて、満面の笑みと共に言いました。

−「オオキ、元気か?」
−私は自分が恥ずかしくなりました。

それから私たちは二人でディナーに行きました。流石に仕事の話はしないで、プライベートな当たり障りのない話題が主になるだろうと思っていたのですが、浅はかな期待はここでも裏切られました。PMは、「TKはどうしてる?もう一人のTKはどうだ?IMは?最近の米経済は、或いは財政はこういう問題を抱えているから、米国債市場はこうなると自分は思う。日本の景気はどうだ?日本の債券市場と株式市場の動向をオマエはどう見てる?日本で最近起きたあの事件の影響は?」等々、追放されてしまった仕事に関して、以前と全く変わらない興味を持ち続けていました。

私はその強靱な精神に、完全に圧倒されました。

PMは汚れた英雄かも知れません。しかし、やはりウォールストリートの英雄は、戦車の装甲のような精神力と、恒星のように決して燃え尽きることのない仕事に対する好奇心を備えているものだと、心底から、本当に、正に、オッタマゲタのでした。ディナーが終わりPMは、「オオキ。ワーク・ハード!」と言って、ニヤリと不敵に笑って去っていきました。