PMは一時世界中の金融界を騒がせた人物です。大学を出て最初に勤めた会社での、アメリカ人として2人目のボスでした。PMは米国債のトレーディング・デスクの責任者だったのですが、或る時政府機関債の入札の件で政府のBという役人と諍いになり、その感情的な拗(こじ)れが恐らく原因となって、2年国債の違法買い占めという事件を起こしてしまいました。
本件は大きなスキャンダルとなり、その結果、会社は潰れかねないほど傾くことになり、PMの記事は毎日のように欧米の紙面を騒がせることとなりました。PMは社を離れ、かつての同僚や社会から強烈な非難と制裁を受け、1・2年後には夥しい数の訴訟を抱えることになりました。
そんな或る日、私はNYに出張することになりました。過ちを犯したとは言え、私にとってはとてもいい上司であり、色々なことを教えて貰った恩がありましたので、私はやはり一度は御礼を言うべきだと考え、思い切って電話をしました。PMは喜び、一緒にディナーをすることになりました。そしていよいよ当日、待ち合わせの場所に現れたPMを見て、私は驚きを隠せませんでした。(続く)