今日の東京は、まさに「春!」といった感じでした。とにかく暖かく、街のテラスカフェにも人が繰り出し、賑やかで若々しい雰囲気に満ちていました。「春」は元々草木の芽が「張る」意であったそうです。そう考えると今日のような陽気は「春」をすでに通り越している気もします。今年の春は、初っ端で天候不順というか三寒四温的な動きが激しかったせいか、或いは私の鼻もとうとう花粉症でやられてしまったのか、或いはまたビルの中ばかりにいて街をあまり歩かなかったのか、春の香りをあまり嗅がなかった気がします。沈丁花がある所にたまたま行かなかったせいかも知れません。香りは感情に強く訴えるものですから、「春を味わい逃した」というような、どこか寂しい気もします。『散りぬとも 香をだにのこせ 梅の花 恋しきときの 思ひいでにせむ』(古今集、春歌上、読み人知らず)そもそも香りというものは、懐かしさや、寂しさなどの、脳神経の中でも感傷的な部分に作用するものなのかも知れません。