2026年8月28日(金)8:30発表
日本 東京都区部消費者物価指数2026年8月分速報
【1】結果:東京コアCPIは前年同月比1.8%上昇 市場予想に沿った内容に
2026年8月の東京都区部消費者物価指数(以下、東京CPI)は、ヘッドラインの総合指数が前年同月比1.9%上昇となりました。生鮮食品を除くコアCPIは同1.8%上昇、生鮮食品・エネルギーを除くコアコアCPIは同2.0%上昇となりました(図表1・図表2)。
なお、今回の公表から消費者物価指数は2025年基準へ切り替えられています。エネルギー関連のインフレ動向を確認すると、ガソリンの暫定税率廃止の影響や政策効果もあり、伸びの減速が確認されます(図表3)。
【2】内容・注目点:サービスにも物価上昇のモメンタムがうかがえる
日銀が公表する、特殊要因を除いた物価指標を確認すると、「生鮮食品・エネルギー、特殊要因を除く消費者物価指数(図表4・水色)」が7月は前年同月比2.3%上昇となりました(図表4)。特殊要因を除いた指数でも、エネルギー関連におけるインフレの一服がうかがえる一方で、サービスを始めとする底流のインフレが上昇基調にあると推察されます。
実際、日銀が8月26日に公表した7月の企業向けサービス価格指数は前年同月比3.6%上昇と、6月の3.4%から伸びが拡大しました。一部には、運送費などの高騰の影響も見られますが国際運輸を除いた指標でも同3.1%と高めの伸びとなっており、企業間取引におけるサービス価格にはなお上昇圧力が確認されます。
その他にも、所定内給与や高人件費サービスなどが上昇基調であることが図表5から見受けられます。今後は、円安や原材料価格など外部環境だけでなく、賃金上昇が外食や宿泊をはじめとしたサービス価格にどの程度波及しているかが、国内インフレの持続性を判断するうえで重要なポイントとなりそうです。加えて、賃金の上昇モメンタムが継続していると判断しやすい環境になっていると筆者は想定しています。ゆえに、外部の要請も一部にはあると考えられるものの、日銀の利上げ判断はデータに裏付けられたものとも言えそうです。
【3】所感:日銀は「2%に届くか」から「2%を超えないか」へ視線を移す
8月27日の講演で氷見野副総裁は、日銀が「足元の物価の動きより、物価の基調を重視」して政策を運営していると改めて説明しました。原油価格や米価格、政府の物価対策などによって実際のCPIは一時的に上下する一方、それらの影響が剥落した後にどの程度の物価上昇率が残るのか、という「基調」を政策判断の軸としているためです。
この点で注目されるのは、氷見野副総裁が日銀の政策判断を巡る局面の変化にも言及したことです。従来は、基調的な物価上昇率が2%へ向かって上昇し、最終的に2%で定着するかどうかが主な焦点でした。しかし足元では、賃金、予想物価上昇率、需給環境などを踏まえ、「2%を超えていく可能性」も考慮する局面に変わってきたとの認識を示しています。
さらに、同講演では、原油価格上昇によるコスト増は川上・川中企業には既に転嫁されている一方、最終財・サービス企業から消費者への転嫁は「これからが本番」との見方も示されました。円安や半導体価格上昇なども含め、日銀は年度後半に消費者物価上昇率が再び2%を上回る状態が続くと想定しています。
市場では9月末の利上げを想定していた向きもある中で、同講演はさほどタカ派には受け止められませんでした。もっとも、筆者の印象としては従前の日銀のスタンス通りで、その時々のデータを見ながらの判断といった具合で、過度な織り込みをけん制する狙いもあったように思えます。
ただ、今回のCPIや直近の賃金・サービス物価のデータをみても、物価の上振れリスクを意識する内容であり、今後もそれらの価格転嫁が相応に進むと想定すれば、次回利上げはそう遠くないと考えられます。目先のポイントは基調的な物価上昇率が2%程度で安定するのか、あるいは2%を超えて上振れるリスクが高まるのか、という点に移っているとみられます。
マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 山口 慧太
