日経平均はやや調整色が増してきたように感じています。前回、前々回のコラムで指摘してきた通り、「振れ幅が大きいときは相場の転換点が近い」との経験則はやはり伊達ではなかったということでしょう。過熱感のあった半導体関連銘柄も、冴えない展開へと転じています。AIなどは我々の生活を劇的に変え得る大きなテーマである以上、これで勢いが萎んでしまうとは考え難いのですが、やはり相応の日柄調整が必要ということなのだと受け止めています。
調整色が増してきたとはいえ、少し引いてトレンドをみれば、相場の腰はまだまだ強いとの評価が揺らぐものではないでしょう。そもそも株価上昇が急ピッチであったことは誰もが認識していたはずです。焦る必要はありません。このような時こそ、落ち着いて対応するのが重要とのスタンスを継続したいところです。
次なる物色テーマはAI株の対極?「人の行く裏に道あり花の山」
さて、今回は「低位株」をテーマに取り上げてみたいと思います。このお題はテクニカル的なもので「アナリスト視点の相場テーマ」というタイトルにはちょっとそぐわないかもしれません。それでもあえて取り上げるのは、足許でAIラリーにやや息切れ感が見え始めたことで、今後の物色対象としてこれらが静かに浮上してくるのでは、と考えたためです。
皆様よくご存じの通り、AIラリー本丸銘柄の株価は(これまでの急騰もあって)数千円かそれ以上というケースが多く、個人投資家からすれば1単位(=100株)の投資に100万円単位の資金が必要となっていました。AI相場に参加しようとしても、この資金負担が重荷となって見送ったという方は少なくないと想像します。
これまで相場の圏外だった銘柄群の注目度が相対的に増してきた際には、一転してより投資しやすい水準の銘柄の注目度が上昇してくるのではと想定し、ここではAI株の対極とも言える低位株に焦点を当てようという狙いです。
実際に低位株ブームが来るかどうかは不明ですが、そろそろ千利休が詠んだとされる「人の行く裏に道あり花の山」という相場格言を意識してもよい頃と考えたのですが、いかがでしょうか。蛇足ですが、この利休の句には下の句があり、「いずれを行くも散らぬ間に行け」と続きます。これもまた含蓄がありますね。
全上場企業の3分の1、実は多い「10万円以下」の銘柄群
その低位株ですが、実はきちんとした定義はありません。一般には株価水準の安い株式を指していると考えます。イメージとしては1単位の投資資金が10万円以下の銘柄群というところでしょうか。とすると、1株当たりの株価は1,000円以下となります。特に500円以下の株価群は、投資に踏み出す敷居の低さもあり、再評価の対象として認識されてくるのではないかと想像します。
なお、東証を中心に上場企業数はおよそ3,900社に上りますが、単元株価格(多くは100株の価格)が10万円を切る銘柄群は約1,400もあります。5万円以下まで絞っても、約650社です。日経平均は7万円となり、キオクシアホールディングス(285A)のように大きく値上がりした株式に巷間注目が集まりますが、実は10万円以下で投資できる対象は、全上場企業の3分の1もあるのです。
お手軽さの裏に潜むリスク。低位株ならではの「変動率」に注意
ただし、低位株投資にはその特性をきちんと理解しておく必要もあります。投資家から見て、低位株投資のメリットは、なんといっても投資金額のお手軽さにあると言ってよいでしょう。企業側から見ても、これによって多くの潜在株主への訴求が可能となり、買い支え効果も期待できることになります。
しかし、株価変動に伴う資産への影響(インパクト)はその分大きくなることを見逃してはいけません。低位であるが故に、値がさ株と同じだけ株価が変動しても、その変動率は桁違いとなるためです。株価1万円と株価100円で考えてみれば、10円動いた場合、株価1万円だと0.1%のインパクトですが、株価100円だと10%ものインパクトとなります。
株価の上昇局面は嬉しいことこの上ないですが、下落局面では強烈なダメージを受けることになります。それだけでなく、低位株は株価が下落するとあっという間に「危険水域」とみなされかねない点にも注意が必要です。投資金額の手軽さと株価変動の大きさは、まさに逆比例関係にあることをしっかりと認識しておくべきでしょう。
なぜ株価が安いのか?「資本効率(ROE)」から見る低位株の実態
また、そもそもなぜ低位株なのか、という視点も重要です。低位株であるということは、企業規模に比べて発行済株式数が多いということに他なりません。値がさ株はその逆ですね。意図的に低位株というポジションを選択している企業(例えばNISAなどの個人投資家層の獲得を狙うなど)や、ごく自然体でそうなったという企業もありますが、過去の資本政策が業績実態に合わなかったことのツケが回っているという可能性もあるのです。
あくまで統計上の結果ですが、東証上場の低位株約1,300社のうち、ROEが資本コストの目安となる6%を下回っている企業は640社とほぼ半数に上ります。同じ基準で見た値がさ株(ここでは株価8,000円以上と定義)100社ではその比率が10%に留まることと比較しても、資本効率という観点で低位株の見極めは重要と言えるのかもしれません。
高配当・高ROEでスクリーニング、抽出された銘柄は?
では、どのような企業が低位株投資の対象になるでしょうか。ここでは低位株を株価1,000円以下と定義し、
(1)時価総額1000億円、
(2)配当利回り4%以上、
(3)直近のROEが10%以上
という銘柄をスクリーニングしてみました。つまり低位株ながら、
(1)一定以上の企業規模にあり、
(2)(高配当利回りにより)株価の下値抵抗力が高く、
(3)(高ROEにより)業績も順調、
と目される企業、というわけです。
ご紹介すると、ジェイエイシーリクルートメント(2124)、UTグループ(2146)、日本M&Aセンターホールディングス(2127)、パーソルホールディングス(2181)、松井証券(8628)、ソフトバンク(9434)、アコム(8572)、オンワードホールディングス(8016)、野村不動産ホールディングス(3231)などの銘柄の名前が出てきます。
これらは機械的にリストアップした銘柄ですので、皆様が実際に投資される際には事業内容に加え、配当や業績の継続性リスクについてのご確認はお忘れなく。当然、検索条件を変えれば他の企業名も出てきます。皆様ならではの投資スタイルに合った銘柄選択を、ぜひ検討してみてください。
