日経平均は一進一退と、振幅の大きな展開となっています。先日は米国金利の上昇観測が台頭したことをきっかけに軟調な推移に転換し、一時は63,000円割れという局面もありました。しかしその後はイラン情勢の沈静化や日銀の金利引き上げというイベントを通過したこともあって急伸し、ザラ場では遂に7万円を超える勢いとなりました。最近は振れ幅が大きく、少々の変動幅ではもう驚かなくなってしまいました。
経験則として、振れ幅が大きいときは相場の転換点が近いという見方があります。それだけ先行きの見方が分かれているということなのでしょう。実際、これまでの急速な上昇ピッチからは日柄調整入りがあってもおかしくなく、半導体関連の過熱感も否めない状況でした。一方でインフレや流動性の潤沢さは強烈な株価の下支え要因として、依然機能しています。経験則はあるものの、まずは日々の動きに慌てる必要はなく、落ち着いて対応するのが重要と言えるでしょう。むしろ、過熱感のない銘柄や(相場急落時には)買いそびれた銘柄を仕込むタイミングと割り切って臨みたいところです。
ドラッグストアから家電量販店まで、塗り替わる勢力図
さて、今回は「小売再編(除く百貨店)」をテーマに取り上げてみたいと思います。先日、家電量販店トップのヤマダホールディングス(9831)と業界4位のエディオン(2730)の経営統合というビッグニュースが飛び込んできました。両社は2027年10月に共同持株会社の傘下に入り、売上規模2.5兆円の巨大グループになる予定です。実は、小売業界ではこうした再編の可能性が近年高まってきており、こうしたニュースもある意味、起こるべくして起きたことと言えます。
コロナ禍以降の主な再編事例
コロナ禍以降の主だった事例だけでも、ざっと以下のような再編劇が繰り広げられています(図表参照)。地方地盤の小売店にも少なからず再編の波は押し寄せており、2020年以降は小売業界の勢力図がどんどん塗り替えられているのです。
| カテゴリー | 時期 | 概要 |
|---|---|---|
| ドラッグストア | 2025年12月 | ツルハホールディングス(3391)、ウエルシアHDを傘下に |
| 2026年1月 | イオン(8267)、ツルハホールディングス(3391)を子会社化 | |
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ディスカウンター |
2025年7月 | トライアルホールディングス(141A)、西友を買収 |
| 2026年4月 | パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(7532)、Olympicグループ買収発表 | |
| GMS | 2023年 | セブン&アイ・ホールディングス(3382)、そごう・西武を売却 |
| 2025年9月 | セブン&アイ・ホールディングス(3382)、イトーヨーカドーなど持株会社ヨークHD売却 | |
| ホームセンター | 2022年 | カインズ、東急ハンズを完全子会社化 |
| 家具 | 2021年 | ニトリ(9843)、島忠を完全子会社化 |
| 家電量販店 | 2022年 | ヤマダホールディングス(9831)、大塚家具を吸収 |
| 2025年 | ノジマ(7419)、VAIOを買収 | |
| 2026年4月 | ノジマ(7419)、日立製作所(6501)家電事業を買収 |
なぜ今、これほど急ピッチで再編が進むのか?後押しする「3つの構造変化」
人口減による消費市場の縮小リスク
これほど急ピッチで再編が進むのには理由があります。まずは日本の人口構造問題です。少子高齢化やそれに伴う人口減によって、消費市場の縮小リスクが鮮明となってきました。市場縮小下で成長を実現するには、シェアの拡大しかありません。再編はシェア拡大のために時間を稼ぐ有効な手段と言えるのです。
良いモノを求める専門店志向
次に、消費者行動様式の変化です。「慌てて買う必要のない」デフレ期間を経て、消費者は良いモノ、納得できるモノを購入しようとする傾向が定着してきました。すると、そこそこのモノを何でも売っているという「ワンストップショップ」よりも、より専門的な知見や訴求力を持つ「専門店」が志向されるようになったのです。老舗のGMSが再編の俎上に上がっているのはまさにその証左と言えるのかもしれません。
ECの急成長
ECの台頭も忘れてはいけません。経済産業省の報告では、2024年の対消費者向けEC市場規模は15.2兆円に達し、過去10年の平均年成長率は8.3%に達しています。全小売市場の同期間成長率1.7%と比べれば、ECの成長は明らかと言えるでしょう。全小売市場に占めるEC化率はまだ10%に達していませんが(世界では23%程度に達しています)、ECに対抗して消費者に実店舗まで足を運んでもらえる訴求力を確保できるのかどうか、小売企業は生き残りが迫られているとも言えるのです。
その結果、仕入れ元との関係にも変化が出てきました。価格に敏感な消費者をターゲットとする小売業において、利幅引き上げには(値上げよりも)仕入れ値の引下げを追求したくなるものです。大手小売企業はこれまでは強力な販売力を武器に仕入れ元に交渉を迫ることができましたが、ECの台頭によりそれが武器ではなくなりつつあるのです。小売各社が大きくその身の丈を変えようとしているのは、まさにこうした時代の変化への適応を模索しているためなのです。
家電量販店も「製造小売(SPA)」へ?再編の狙いと投資の視点
換言すれば、こうした再編が上記の問題克服につながるのかどうかが、大きな焦点となります。実際にどこまで効果を発揮できるかはやってみなければわかりませんが、その狙いをしっかりと理解しておくことが株式投資を考えるうえで非常に重要と言えるでしょう。
今回の家電量販店の再編は、プライベートブランド製品の開発力強化が狙いとされています。プライベートブランド戦略では仕入れ元との交渉ハードルの引下げや卸売コストの引下げなどから利幅の拡大が見込めますが、同時に初期投資負担が重く、販売が低調となれば在庫処分リスクなども膨らむ諸刃の剣です。それでもファーストリテイリング(9983)やニトリホールディングス(9843)、良品計画(7453)のように、家電量販店業界においても、ノジマ(7419)による日立家電取得と併せ、自前で製造も手掛ける製造小売り(SPA)への傾斜に号砲が鳴ったということなのかもしれません。
小売業界では、今後もこのような再編を通じ、各社の戦略がより鮮明になってくるものと予想します。軸足を運営効率追求に置くのか、実店舗の魅力引上げに置くのか、はたまたPB製品などで利益率引上げに置くのか。もちろん、注力度合の濃淡ということではあるものの、これまで以上に差別化が進む可能性は大きいと言えるでしょう。株式投資においては、実際にどういった店舗で買い物をしたいのか、という発想がより重要になってくるものと考えます。
主要プレイヤーの現状とPER比較。これからの評価はどうなる?
最後に、現在の小売業界の主たるプレイヤーをまとめておきましょう。
現在は、売上高で10兆円を超えるイオン(8267)、セブン&アイ・ホールディングス(3382)を双璧に、ユニクロを擁するファーストリテイリング(9983)、ドン・キホーテを擁するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(7532)が売上2兆円超の企業として続きます。売上1兆円規模の企業群としては、ヤマダホールディングス(9831)、ツルハホールディングス(3391)、マツキヨココカラ&カンパニー(3088)、コスモス薬品(3349)、スギホールディングス(7649)などの名前が連なります。
これら企業のPER(=成長期待値)を大まかに分類すると、PERが50倍前後という企業がイオン、ファーストリテイリング。PER20~30倍という企業がパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス、ツルハホールディングス。そしてプライム市場平均PER(17倍)と同程度、もしくはそれを下回る企業として、セブン&アイ・ホールディングス、ヤマダホールディングス、マツキヨココカラ&カンパニー、コスモス薬品、スギホールディングスが、それぞれグルーピングできます。
株主優待や配当利回りも勘案する必要はありますが、概してドラッグストアや家電量販店は、この事業環境の変化にどう対応していくのか、まだ株式市場からの評価は定まっていないように思えます。皆様はどうお考えでしょうか。
