本コラムの読者の皆さんの多くはユニセフや日本赤十字に募金したり、歳末たすけあい運動への支援や、天災で被害に遭われた方への支援のために寄付したことがあると思います。ただ、支援はしたもののそれがどのように使われてどんな結果になったかまでフォローしている人は少ないのではないでしょうか。
最近、本業の資産運用だけではなく社会貢献にも興味を持ち、情報を集めています。資産運用は個人の利益を追求する利己的な活動であり、社会貢献は他者や社会のために尽くす利他的な活動です。一見すると真逆のものに見えます。
しかし、掘り下げていくと2つは驚くほど似通っていることに気が付きました。どちらも限られたリソース(時間、能力、資金)を活用してより良い未来を実現しようという点では同じだからです。
人生の目標設定からアプローチする
資産運用を始める時、多くの人が「どの銘柄が上がるか」「どの投資信託が低コストか」といった具体論から入ってしまいがちです。しかし、まず最初にやるべきことは、具体的な投資商品の選定ではなく人生の目標の設定です。自分がどのような人生を送りたいのか、周りの人に何をしてあげたいのか。その人生の目標から逆算しなければ、適切な投資の方法は決められません。
これは社会貢献も同様です。単に寄付して満足するだけでは、せっかくの善意が自分の思いと違う方向に使われてしまうかもしれません。どの分野のどのような課題を解決し、それによって自分がどのような目的を達成したいのか。まずは自分自身の価値観を見つめ直し、社会貢献の目的を明確化することから始めるべきです。
お金は目的ではなく手段
マネー誌で「1億円つくる」という特集が組まれることがありますが、1億円という金額設定には何の意味もありません。お金は自分の人生の目標を実現するための手段に過ぎず、そのために必要なお金は人によって異なってくるからです。資産運用においてお金を目的化してしまうと、不必要なお金を手に入れるために不必要なリスクを取ることになりかねません。
これは社会貢献でも同じです。寄付金額が多ければ良いというものではなく、自分が解決したい課題に対して何が必要なのかを考えるアプローチを取るべきです。
目標達成までの「最短距離」を考える
目標が決まればそこへ到達するための最も効率的なルートを探す必要があります。
資産運用における「最短距離」とは、自分のリスク許容度の範囲内で最適なアセットアロケーション(資産配分)を決めることです。
社会貢献においても、課題解決に対して自分が最も効果的に貢献できるポイントはどこかを見極める必要があります。
思い付きで資金を投じるのではなく、「戦略的な支援」を考えることで限られた資源で最大の結果を出せます。目標を定め戦略を立てた後に、初めて「具体的なアクション」を考え実践していきます。
資産運用でいえば、ここでようやくインデックスファンドを買うのか、都心の中古ワンルームマンションを購入するのかといった具体的な投資商品の選択が行われます。
社会貢献の場合、例えば「教育格差をなくす」という目標があれば、そのための戦略として「子供へのIT教育」が必要だと判断し、最後に「特定のNPOへの寄付」や「IT企業との協働」などのアクションが決定されるべきです。「知人に頼まれたから」といった動機で始めると、自分のやりたいことの軸がぶれ、いずれ継続できなくなってしまうかもしれません。
「モニタリング」と「改善」を繰り返す
さらに投資は実行したらそのまま放置ではありません。定期的なモニタリングとリバランスが必要です。市場環境の変化や自分自身のライフステージの変化に合わせて、ポートフォリオを最適化し続けることが不可欠です。
社会貢献も同様にお金を出して終わりではありません。自分の投じた資金や時間が、実際にどのような成果(ソーシャル・インパクト)を生んだのか。支援先の団体が適切に運営されているか。当初の目的に対してズレが生じていないか。これらをチェックし、必要であれば支援先を変えたり関わり方を改めたりします。
この「モニタリング」と「改善」の繰り返しが、活動を形骸化させないために大切です。
社会貢献にも様々な方法がある
資産運用に株式、債券、不動産といった多様なアセットクラスがあるように、社会貢献にも多様な方法が存在します。
伝統的な寄付もあれば、インパクト投資と呼ばれる社会的企業への投資、あるいは自身の専門スキルを無償で提供する「プロボノ」という形もあります。
大学のクラスメイトでマネックスグループを創業した松本大さんは「ルビ財団」というユニークな社会貢献活動を行っています。これは日本語の文章にルビ(ふりがな)をつけることを広げる活動です。年代や国籍に関係なく、誰もが日本語で学びやすい環境を作るのが目的です。寄付やボランティアだけが、社会貢献ではないのです。
専門家の知見を活用する
資産運用の世界で、素人が独学だけでリターンを出し続けるのは困難です。信頼できるアドバイザーや優れたファンドマネージャーの知見を活用することで大きな失敗を避け、成功の確率を高めることができます。
社会貢献でも現場の最前線で活動するNPOのリーダーや専門のコンサルタントは、私たちが知らない社会貢献の注意点やより良い方法を知っています。
それぞれの専門性を尊重しながらリソースを託すことで、資産運用においても社会貢献においても、最終的なリターン(成果)を最大化することが可能になります。
日本でもようやく社会貢献に興味を持つ人が増えてきました。せっかく社会貢献をしようと考えるのであれば、資産運用と同じようなシステマティックなアプローチによって、その気持ちを無駄にしないようにしたいものです。
