2026年7月2日(木)日本時間21:30発表
米国 2026年6月雇用統計、他
【1】結果:雇用者数は市場予想を下回る、4月・5月も下方修正
2026年6月の非農業部門雇用者数は前月比5.7万人増となり、市場予想の11.3万人増を大きく下回りました。また、4月・5月分の雇用者数も堅調さがうかがえたものの、今回の発表で合計7.4万人下方修正されました。非農業部門雇用者数の前月比3ヶ月移動平均値は11.1万人と底打ち感はあるものの、トリム平均(14.6万人)を下回っています(図表1-1参照)。
内訳を見ると、2026年6月は医療・教育を除いたサービス部門の雇用減が確認されました(図表1-2)。中でも、娯楽・ホスピタリティー業の雇用減が著しく、前月から6.1万減となりました。当局は、この現象を季節的な要因と指摘していますが、同業種の雇用では、現在開催中のサッカーワールドカップによる雇用押し上げ効果が期待されていたこともあり、その影響が軽微であったことも示唆されます。
失業率は小数点以下2位で4.19%と前回から0.11ポイント低下しました。就業率が59.0%と0.2ポイント低下し、労働参加率も61.5%と2021年3月以来約5年ぶりの水準まで低下しました(図表2-1)。雇用の伸び以上に、労働力人口の減少が失業率の低下に寄与している印象です(図表2-2)。
【2】内容・注目点:市場予想を下回ったものの、潜在的な水準を超えた結果と言える
市場予想を下回る雇用の伸びを受けて、直近で織り込まれていた利上げ観測は幾分か後退したようです。もっとも、雇用自体はそれほど強くなり得ないというのが、筆者の見立てです。
移民政策などが要因となり、労働力人口が減少傾向にある米国において、失業率を安定させるためのブレイクイーブン雇用者数(≒失業率を安定させるために必要な雇用増加数)は、FRB(米連邦準備制度理事会)の試算によると、足元では2万人程度とされています(図表3)。今回の3ヶ月移動平均値は11.1万人とそのブレイクイーブン雇用者数を上回っています。
逆に言えば、潜在的には2万人程度の雇用増が現状では期待されている水準であり、足元の雇用情勢が弱いわけではなく、妥当あるいは堅調な水準と言えます。
【3】所感:物価注視局面は変わらずも、すでに上振れリスクは減退か
足元では年内の利上げが徐々に織り込まれている中で、今回の雇用統計はそれに待ったをかけるものでした。筆者としては直近の雇用の伸びは潜在的な範囲のものであり(むしろここ2ヶ月が上振れであった)、FOMC(米連邦公開市場委員会)メンバーも許容する内容と想定しています。そのため、雇用を不安視するというよりは、先のFOMCで示されたように多くの政策委員は物価上振れをリスク視しているといったところでしょう。
もっとも物価自体もピークアウトが確認でき、7月1日に発表されたISM製造業景気指数の価格指数は市場予想77.5であったところ、実際には73.0と市場予想を大きく下回り、また、グラフからもその鈍化傾向が読み取れます(図表4)。
今後の物価情勢には注意をもって確認が必要なものの、物価上振れリスクは前回会合よりも低下しているというのが、筆者の現状認識です。FRBは中長期的な政策金利水準(Longer run)としている3.1%(中央値ベース)に向け、緩和スタンスを続けていくものと考えています。
マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 山口 慧太
