イラン戦争下の米ドル買いは「有事の米ドル買い」なのか?
CFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋の米ドル・ポジション(非米ドル主要5通貨=円、ユーロ、英ポンド、加ドル、豪ドルのポジションで試算)は、2月末に米国等のイラン攻撃が始まる前まで20万枚近い大幅な売り越しとなっていた。ただ、その後は売り越しが急ピッチで縮小に向かい、さらに買い越しに転換すると、4月7日時点では14万枚まで買い越しが拡大した(図表1参照)。
イラン戦争が展開する中での為替市場の動きについて、「有事の米ドル買い」との説明が多かった。確かに、米ドル・ポジションが売り越しから買い越しに転換、さらに買い越し拡大となった動きは、イラン戦争が展開する中で米ドル買いが続いたことを示している。ただ、それは「有事の米ドル買い」ということだったのか。
4月上旬で一巡した米ドル買い=戦争続く中でなぜ?
投機筋の米ドル買い越しは、4月7日時点の14万枚をピークに、その後は2週連続で縮小し、21日時点では10万枚を割れた。米国とイランが停戦したものの、なお戦争が終わったわけではないにもかかわらず、なぜ米ドル買いは一段落となったのか。
投機筋の米ドル買いが一巡した4月上旬は、原油価格高騰が一巡したタイミングでもあった。その意味では、イラン戦争で広がった米ドル買いは原油価格上昇の影響が大きかったということになるのではないか。イラン戦争自体まだ終わったわけではないにもかかわらず、原油高が一巡したところで一巡した米ドル買いを「有事の米ドル買い」とするのは、果たして正しかったのか。
米ドルを説明できたのは原油価格=そして原油と米金利の連動
それにしても、なぜ原油価格の変動と米ドルの売買が連動したのか。シェール原油登場により米国はサウジアラビアやロシアを抜いて「世界一の産油国」となった。その意味では「原油高=米ドル買い」は間違えではなさそうだ。ただ、より直接的には、原油高が米金利上昇をもたらしたことの影響だったのではないか。
イラン戦争が展開する中での原油価格と米金利には一定の相関関係が確認された(図表2参照)。その意味では、イラン戦争が展開する中で米ドル買いが広がったのは、原油価格高騰が米金利上昇をもたらした影響が大きかったと考えられる。そして、原油価格が下落に転じ、それに連れる形で米金利も低下すると、すでに見てきたように米ドル買いも一巡となった。
「有事の米ドル買い」というなら、戦争が終わるまでそれは続きそうだ。ただ、事実として、まだイラン戦争が終わったわけでもない中で米ドル買いは一巡し、米ドル相場も対円以外では比較的大きく反落した。これを説明できそうなのは、戦争という「有事」より、原油価格や、それに連れた米金利の動きということではないか。
