円の総合力を示す実質実効レートの安値更新止まらず
日本の通貨当局は、2024年4月に160円程度で米ドル売り・円買い介入を開始し、結果的に161円で円安を止めるところとなった。そして、2026年4月、改めて米ドル高・円安が160円を超えてくると、米ドル売り・円買いの介入を再開したとみられている(図表1参照)。以上のようにみると、2024年以来、160円以上の米ドル高・円安を容認しない方針が続いているようだ。では、なぜ160円という水準にこだわるのだろうか。
米ドル/円は、2024年7月に記録した161.9円という円安値を、これまでのところ更新していない。ただユーロ/円など、米ドル以外の多くの通貨に対して円は2024年の安値を大きく更新した。その結果、円の総合力を示す実質実効レートは、すでに2024年に記録した安値を大きく更新している(図表2参照)。
その意味では、160円の米ドル高・円安阻止にこだわっているというより、総合的に円安がさらに拡大していることを懸念し、為替市場への介入を再開した可能性も否定はできない。ただ、おそらくそれも違うのではないか。
共通性があった2022年と2024年の介入=2026年はこれまでと違う
円の実質実効レートの5年MA(移動平均線)かい離率を見ると、2022年、2024年の円安阻止介入は、同かい離率がマイナス20%前後とほぼ同じ水準で行われていた。これに対して、確認できる最新の同かい離率は3月のマイナス13%で、2024年までの介入が行われた時の水準とかなり違う(図表3参照)。
これは、米ドル/円の5年MAかい離率で見てもほぼ同じ結論になる。つまり、5年MAかい離率で見ると、米ドル/円の場合も円の実質実効レートの場合も、2022年と2024年の円安阻止介入には共通性があったのに対し、2026年の介入にはそれがない(図表4参照)。
米国に好ましくない円安放置?=円安阻止で日米の利害一致か
以上のようにみると、同じ160円での円安阻止とはいえ、2024年のそれと足下の方針はやはり違うのではないか。では今、160円の円安阻止にこだわる理由は何か。高市政権は、話題になった高市総理の「円安で外為特会はホクホク」発言や、一部で報道された日銀の追加利上げに対して難色を示したことなどから察するに、これまでより円安を懸念している感じはない。
そう考えると、160円での円安阻止にこだわっているのは日本国内ではなく、むしろ米トランプ政権ということになるのではないか。具体的な160円という数字に意味があるかは分からないものの、円安放置がトランプ政権にとっても好ましくない理由から、日米の利害の一致を見た結果が160円での円安阻止になっている可能性があるのではないか。
