介入再開以降の円売りに影響した米ドル/円の120日MAとの関係
ヘッジファンド(以下ヘッジF)の取引を反映するCFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋の円ポジションは、4月末に日本の通貨当局が2024年7月以来の米ドル売り・円買い介入を再開したとみられると、大きく縮小した。ただ先週は小幅ながら円売り越し再拡大となった。
具体的に見ると、円売り越しは、4月28日時点では10.2万枚だったが、5月5日時点では6.1万枚と大きく縮小したものの、5月12日時点では7.5万枚まで再拡大した(図表1参照)。
120日MAの157円割れなら円買い戻し、157円以上なら円売り
このような投機筋の円売りポジションの変化を比較的うまく説明できそうなのは、損益分岐点との関係だ。ヘッジFの米ドル買い・円売りポジションの損益分岐点は120日MA(移動平均線)が1つの目安とみられているが、それは足下で157円程度である。改めて為替介入以降の米ドル/円と120日MAの関係を振り返ってみよう(図表2参照)。
4月30日に日本の当局が為替介入を行ったとみられると、米ドル/円は一時155円割れ近くまで急落した。つまり157円程度の損益分岐点を割り込んだことで、ヘッジFの米ドル買い・円売りポジションは損失拡大懸念が広がったと考えられる。そうした中、ポジションの処分を急いだことで、円売り越しは10万枚から6万枚へ大きく縮小したということだろう。
ところがその後、米ドル/円は底固く推移し、先週(5月11日週)は損益分岐点の157円を上回り一時158円台まで上昇した。これにより米ドル買い・円売りポジションの損失拡大懸念は後退し、むしろ含み益を回復したとみられた。このことからヘッジFは米ドル買い・円売りを再開。その結果、円売り越しは6万枚から7万枚に再拡大したということだろう。
円安阻止策の成否の分岐点でもある米ドル/円の120日MA
以上のようにみると、ヘッジFなど投機筋の米ドル/円の取引戦略は、足下で157円程度で推移している120日MAとの関係が、今後も重要な鍵になりそうだ。具体的には、米ドル/円が157円を上回って推移するなら、ヘッジFは米ドル買い・円売りを継続し、日本の当局による160円水準での円安阻止が試されることになりそうだ。逆に、米ドル/円が157円を大きく割れるようなら、米ドル買い・円売りポジションの損失拡大回避のためヘッジFは円を買い戻し、円高への反転を後押しする可能性が出てきそうだ。
2022年と2024年、日本の当局が単独の為替介入により米ドル/円の120日MA割れに成功すると、その後米ドル安・円高への反転が進んだ。それは、ヘッジFなど投機筋の米ドル買い・円売りポジションの損失拡大を回避するための円買い戻しが一因だったと考えられる。
今回も日本の単独介入で、米ドル/円を120日MA割れへと戻し、米ドル安・円高にできるか。それとも1月の「レートチェック」のように、米国も日本の円安阻止に関与する日米協調の形があるのか。日本単独でも日米協調でも、円安が止まり、円高への反転が起こるかどうかは、第一に米ドル/円の120日MA割れが焦点になりそうだ。
