5月の株式市場には、有名な相場格言があります。「セル・イン・メイ(Sell in May)=5月に株を売れ」というものです。果たして、この格言は本当に正しいのでしょうか。今回は、過去のデータを用いて、その有効性を検証していきます。

「セル・イン・メイ」とハロウィン投資の関係

「セル・イン・メイ」は、「ハロウィン投資」と対をなす格言とされることが多いものです。ハロウィン投資とは、10月末に株式を購入し、翌年4月末まで保有するというシンプルな投資手法を指します。本連載の「株価が上昇してきた2025年でも、「ハロウィン投資」は期待できるか」の記事では、その有効性を検証しました。第2次世界大戦後に東京証券取引所が再開された1949年以降、2025年4月までに実施できた76回のうち、株価が上昇したのは55回となりました。勝率にして72%(=55回÷76回)と、高いパフォーマンスが確認されています。

これに対して「セル・イン・メイ」は、このハロウィン投資の期間外、すなわち「4月末から10月末」の投資を控えるよう促す格言です。同期間の勝率を東証再開以来で検証すると52%(=40回÷76回)にとどまり、ハロウィン投資の勝率(72%)を大きく下回る結果となりました。

ただし、勝率が50%を上回っている点には注意が必要です。すなわち、この期間も「上昇する年の方が多い」という事実があり、格言をそのまま鵜呑みにして市場から離れることが適切かどうかには疑問が残ります。

特に近年は株高傾向が強まっており、直近の2025年4月末から10月末までの半年間では、日経平均株価は45%という大幅な上昇を記録しました。もし格言通りに売却していれば、この上昇の恩恵を受けることはできませんでした。さらに、2019年以降の直近7年間は、すべてこの期間に株価が上昇しており、従来のアノマリーが弱まっている可能性も示唆されます。

夏場に株価が上がりにくいとされてきた3つの理由

そもそも、ハロウィン投資の期間外である「4月末から10月末」は、なぜ株価が上がりにくいとされてきたのでしょうか。主な理由は大きく3つあります。

1つ目は、夏季休暇シーズンの影響です。とりわけ欧米の機関投資家は長期休暇を取得することが少なくなく、夏場は市場参加者が減少します。その結果、市場の流動性が低下し、相場を押し上げる新たなテーマも生まれにくくなります。いわゆる「夏枯れ相場」と呼ばれる状態であり、需給面から株価が上昇しにくい環境となります。

2つ目は、決算発表スケジュールの谷間にあたる点です。5月中旬に3月期決算企業の本決算発表が一巡すると、個別企業に関する材料は一旦出尽くしとなります。7月中旬から第1四半期決算が始まるものの、この時点では通期業績予想が修正されるケースは限定的であり、株価を大きく動かす材料にはなりにくい傾向があります。本格的な業績修正が活発化する10月の第2四半期決算まで、材料不足の期間が続きやすいのです。

3つ目は、需給面の要因です。決算期を11月に迎えるヘッジファンドなどが、運用成績の確定に向けてポジションを調整する動きが、秋口にかけて強まりやすいとされています。こうした利益確定売りが前倒しで出ることで、株価の上値を抑える要因となってきました。

近年は「セル・イン・ジュライ(Sell in July)」へ変化か?

もっとも、近年はこうした環境に変化が見られています。ハロウィン投資の期間外である「4月末から10月末」においても、株価が上昇しやすくなっている背景には、いくつかの構造的な変化があります。
まず、本決算発表後も材料が継続する点が挙げられます。コーポレートガバナンス改革の進展により、企業は5月の本決算発表と同時に、自社株買いや増配などの株主還元策を積極的に打ち出すようになりました。これにより、決算発表後も需給改善が続き、株価の下支え要因として機能するケースが増えています。

さらに、国内の需給イベントとして、6月のボーナスシーズンも見逃せません。良好な相場環境のもとで、個人投資家からの資金流入が増加し、市場の押し上げ要因となることが期待されます。

実際に、下記の図表の青丸で日経平均株価の月別勝率を2000年以降で確認すると、6月の勝率は65%と高く、他の月と比べても優位性が確認されます。一方で、図表中の赤丸に示されるように、夏休みシーズンから決算期末にかけての7月から9月の3ヶ月間は、いずれも勝率が50%を下回っており、パフォーマンスが相対的に低調です。

【図表】日経平均株価の月別勝率
注1 データ期間は、1949年6月以降、2026年3月まで 注2 勝率は過去の期間対象の月のうち、上昇した月の割合
出所:日本経済新聞社のデータを基に、マネックス証券作成

こうした結果を踏まえると、「セル・イン・メイ」という従来の格言よりも、「6月の上昇を享受したうえで7月に売却する」という意味合いの「セル・イン・ジュライ(Sell in July)」の方が、足元の市場環境には適している可能性があります。