動画配信関連企業など、「ワールドカップ関連銘柄」が市場で注目される傾向
2026年6月11日に、サッカーのワールドカップ(W杯)が開幕します。W杯は4年に1度開催される世界最大級のスポーツイベントで、「世界最大の祭典」とも呼ばれます。注目度はとても高く、前回2022年カタール大会では、国際サッカー連盟(FIFA)が世界で約50億人が大会を視聴・観戦したと公表しています。
一方、2024年パリ五輪についても、国際オリンピック委員会(IOC)は世界で約50億人規模の視聴者・観戦者に届いたと発表しており、W杯は単一競技の大会でありながら五輪に匹敵する規模を誇ります。さらに、熱狂度という観点では、国や地域によっては五輪以上の盛り上がりを見せるとも言われています。
日本でも、1998年フランス大会で初出場を果たして以降、W杯は国民的イベントとして定着しました。特に2002年の日韓大会、2010年南アフリカ大会、そしてドイツ・スペインを撃破した2022年カタール大会では、日本代表の躍進が大きな話題となり、国内でもサッカー熱が急速に高まりました。
こうした盛り上がりは、スポーツそのものだけでなく、株式市場にも影響を与えます。実際、W杯の開催時にはスポーツ用品メーカー、さらに近年では動画配信関連企業など、「ワールドカップ関連銘柄」が市場で注目される傾向があります。そこで今回は、W杯関連銘柄の投資タイミングについて検証しました。
W杯の開幕が近づくにつれ関連銘柄が期待先行で買われやすい傾向
図表1では、1998年以降に行われた7回のW杯を対象に、W杯関連銘柄の株価パフォーマンスをまとめています。1998年を起点としたのは、日本代表が同年のフランス大会で初めてW杯本大会へ出場し、国内でW杯人気が本格的に高まり始めた時期であるためです。
ここでの株価パフォーマンスは、関連銘柄6銘柄の平均リターンから日経平均株価のリターンを差し引いた超過リターンです。これは、単純な株価上昇率だけでは、当時の相場全体の影響を受けてしまうためです。例えば、世界的な株高局面では、多くの銘柄が市場全体の上昇に連れて値上がりする可能性があります。そのため、本稿では日経平均株価を上回って買われたのか、つまりW杯関連銘柄として市場全体よりも強いパフォーマンスを示したのかを確認するため、超過リターンを用いて分析しています。
表の最下段にある平均値を見ると、W杯開催前1週間の関連銘柄の超過リターンは+0.6%となりました。W杯の開幕が近づくにつれて、スポーツ用品やサッカー関連サービスへの関心が高まり、関連銘柄が期待先行で買われやすい傾向があることがうかがえます。
一方、開催期間中の平均は-1.7%となりました。これは、開幕前に期待がある程度織り込まれ、実際に大会が始まると材料出尽くしとなりやすいことを示していると考えられます。開催後1週間については+0.1%と小幅なプラスでした。ただし、水準としてはほぼ横ばいであり、W杯終了後に関連銘柄が一方向に大きく買われ続ける傾向は確認しにくい結果です。
注2:W杯関連銘柄はゼビオホールディングス(8281)、アルペン(3028)、ミズノ(8022)、ヒマラヤ(7514)、サイバーエージェント(4751)、コナミグループ(9766)とした(開催当時に存在しない銘柄は分析から除いている)。また、株式パフォーマンスは対象期間における各銘柄の平均リターンを計算し、日経平均株価に対する超過リターンとしている。
注3:開催日に関する日付は現地時間を基準として記載している。なお、対応するリターンの算出にあたっては、時差は考慮せず、日本時間ベースのデータをそのまま用いている。
出所:QUICK Workstation Astra Managerを用いて、マネックス証券作成
日本代表の活躍で関連銘柄のパフォーマンスは大きく変わる
もっとも、ここまでの分析は、すべての大会を単純平均した結果であり、W杯特有の「盛り上がり」の違いまでは十分に捉え切れていません。実際、W杯では日本代表の活躍度合いによって国内の注目度や熱狂感が大きく変化します。特に、日本代表が強豪国を破って決勝トーナメントへ進出した大会では、サッカー人気が一気に高まり、関連グッズや観戦需要への期待も急速に強まる傾向があります。
つまり、W杯関連銘柄を分析するうえでは、「W杯が開催されたかどうか」だけでなく、「日本代表がどこまで勝ち進んだのか」が重要なポイントとなる可能性があります。そして実際に分析を深掘りすると、日本代表の活躍度合いによって関連銘柄の株価パフォーマンスに違いが見られ、投資タイミングを考えるうえでも興味深い傾向が確認できました。
ベスト16進出とグループリーグ敗退のケースで関連銘柄のパフォーマンスに変化
そこで次に、日本代表がベスト16へ進出した大会と、グループリーグ敗退となった大会に分けて、関連銘柄のパフォーマンスを確認しました。図表2は、日本代表の成績別にW杯関連銘柄の株価パフォーマンスを比較したものです。単純平均では見えにくかった違いが、成績別に分類することでより鮮明に浮かび上がってきました。
注2:W杯関連銘柄はゼビオホールディングス(8281)、アルペン(3028)、ミズノ(8022)、ヒマラヤ(7514)、サイバーエージェント(4751)、コナミグループ(9766)とした(開催当時に存在しない銘柄は分析から除いている)。また、株式パフォーマンスは対象期間における各銘柄の平均リターンを計算し、日経平均株価に対する超過リターンとしている。
注3:開催日に関する日付は現地時間を基準として記載している。なお、対応するリターンの算出にあたっては、時差は考慮せず、日本時間ベースのデータをそのまま用いている。
出所:QUICK Workstation Astra Managerを用いて、マネックス証券作成
グループリーグ敗退時、関連銘柄は厳しい傾向
先ず、日本代表がグループリーグ敗退となった大会では、W杯関連銘柄のパフォーマンスは全体的に厳しい傾向が見られました。開催前1週間の超過リターンは-1.3%、開催期間中も-2.2%と下落しており、さらに開催後1週間では-1.7%、開催後2週間では-3.4%と下落幅が拡大しています。開催後1カ月でも-0.4%とマイナス圏にとどまっており、日本代表が期待ほど勝ち進めなかった場合には、関連銘柄への物色も盛り上がりに欠けやすいことがうかがえます。
ベスト16進出:開幕前に買われやすく、W杯終了後もしばらく継続
一方、日本代表がベスト16へ進出した大会では、対照的な傾向が確認できました。開催前1週間の超過リターンは+2.1%と大きく上昇しており、日本代表への期待感から、関連銘柄が開幕前に買われやすい傾向が見られます。
もっとも、開催期間中については-1.3%とマイナスでした。これは、開幕前までに期待先行で買われていた反動に加え、試合結果を受けた短期的な利益確定売りなどが出やすいためと考えられます。
しかし注目されるのは、その後の動きです。開催後1週間では+1.4%、開催後2週間でも+1.7%とプラス圏を維持しており、日本代表の活躍による熱狂感やサッカー人気の高まりが、W杯終了後もしばらく関連銘柄への期待として残りやすいことが示唆されます。
ただし、開催後1ヶ月では+1.0%と、開催後2週間時点より上昇幅がやや縮小しました。つまり、日本代表の躍進による関連銘柄物色は、W杯終了後もしばらく継続するものの、その勢いは2週間程度をピークに徐々に一服しやすい可能性があります。
この結果を見る限り、W杯関連銘柄への投資では、単純に「W杯開催」を材料視するだけではなく、日本代表への期待度や実際の勝ち上がり状況を踏まえて投資タイミングを考えることが重要と言えそうです。
2026年北中米大会、関連銘柄の投資タイミングはどう考えるか
「挑戦者」から「強豪国に勝てるチーム」へ
では、今回の2026年北中米大会はどうでしょうか。今回の日本代表は、過去と比べても期待の大きい世代と見られています。実際、前回2022年カタール大会ではドイツ、スペインという優勝経験国を撃破してベスト16入りを果たしており、日本代表の実力に対する海外からの評価も高まりました。現在は、イングランド、スペイン、ドイツなど欧州主要リーグで主力として活躍する選手も増えており、かつての「挑戦者」という立場から、「強豪国に勝てるチーム」へと評価が変わりつつあります。
また、長友佑都選手が5大会連続のW杯メンバー入りし、日本サッカー界を代表する大きな話題となりました。さらに、久保建英選手、鎌田大地選手、遠藤航選手など、海外クラブで活躍する主力選手への注目度も高く、大会前から国内のサッカー熱は高まりやすい状況です。
日本サッカー協会(JFA)は、2050年までに「W杯優勝」を掲げていますが、近年はその目標が単なる夢物語ではなくなりつつあります。特に今回の北中米大会は出場国数が48ヶ国へ拡大されることもあり、日本代表に対する期待はこれまで以上に大きいと言えるでしょう。
もちろん、W杯は組み合わせや試合展開による不確実性も大きい大会です。ただ、現在の日本代表の戦力や近年の国際大会での戦いぶりを見る限り、グループリーグ突破への期待は高く、場合によっては日本サッカー史上初となるベスト8進出も十分に視野に入るとの見方も増えています。
開幕前の期待先行による上昇局面を狙う戦略が選択肢か
こうした過去の傾向を踏まえると、今回の2026年北中米大会で日本代表のグループリーグ突破やベスト16進出を期待するのであれば、W杯関連銘柄への投資タイミングとしては、開幕前の期待先行による上昇局面を狙う戦略が一つの候補となりそうです。実際、過去のベスト16進出大会では、開幕前1週間の超過リターンは+2.1%と高く、日本代表への期待感が高まる局面では関連銘柄が物色されやすい傾向が確認されました。
今回の検証では、「開幕日や終了日が日本市場の休場日である場合には、その直前営業日の株価を使用する」というルールで分析しています。このルールに合わせると、2026年大会は現地時間で2026年6月11日開幕ですが、日本時間では6月12日未明の開幕となる可能性が高いため(正式なキックオフが原稿作成時の5月28日では未公表)、日本株市場でみた場合の「 開幕前最後の営業日」は2026年6月11日(木)となります。
開幕後は、利益確定を検討?
一方で、開催期間中については、過去平均でマイナスとなりました。これは、開幕前までに期待先行で買われていた反動に加え、試合結果を受けた短期的な利益確定売りなどが出やすいためと考えられます。このため、過去の傾向だけで見れば、開幕前の2026年6月11日(木)まで関連銘柄を保有し、開幕後はいったん利益確定を検討するという考え方も有効かもしれません。
「熱狂の余韻」にも注目
ただし、日本代表が実際に活躍した場合には、その後の「熱狂の余韻」にも注目する必要があります。過去のベスト16進出大会では、W杯終了後1週間で+1.4%、終了後2週間でも+1.7%の超過リターンとなっており、日本代表の躍進によるサッカー人気の高まりや関連需要への期待が、W杯終了後もしばらく継続する傾向が確認されました。
今回の2026年大会の決勝は、現地時間では2026年7月19日(日)ですが、日本時間では7月20日(月)未明となる可能性が高いと見られます。ただし、2026年7月20日(月)は日本では海の日の祝日で東京市場が休場となるため、今回の検証ルールに従えば、W杯終了時点として実際に対応する日本市場の営業日は直前の2026年7月17日(金)となります。
そのため、日本代表の躍進が確認できた場合には、いったん利益確定した後、W杯終了時点に対応する日本市場の営業日である2026年7月17日(金)前後から、2週間程度を目安に再び関連銘柄を保有するという戦略も考えられそうです。
もっとも、開催後1ヶ月では上昇率がやや鈍化していることから、関連銘柄への物色は永続的に続くわけではなく、W杯終了後2週間前後をピークに徐々に落ち着きやすい点には注意が必要でしょう。
