株式市場では「内閣支持率アノマリー」と呼ばれる現象があります。これは、内閣支持率が高い局面では株価も高くなりやすいという経験則です。政治と株価は直接的な関係が見えにくい面もありますが、投資家心理や政策期待を通じて密接に結びついています。
足元までの相場を振り返ると、高い内閣支持率が市場の安心感につながり、株価の下支え要因となってきたと考えられます。当面はイラン情勢の先行きが見極めにくい状況にありますが、内閣支持率が一定水準を維持できれば、相場の下値は限定的にとどまる可能性があります。今回は、この内閣支持率アノマリーについて確認していきます。
内閣支持率と株価の関係
まず、図表では内閣支持率と日経平均株価の推移を比較しています。2025年10月に高市内閣が発足し、その前後の局面では政策への期待感が先行する形で株価が上昇する動きが見られました。これはいわゆる「ご祝儀相場」と呼ばれるもので、新政権の誕生に伴う期待が株価に織り込まれる典型的なパターンです。
内閣支持率は毎月NHK調査時点、日経平均株価は月末値。
出所:NHKウエブサイト、QUICK Workstation Astra Managerを用いて、マネックス証券作成
過去を振り返ると、株価は内閣支持率アノマリーだけでなく、企業業績、為替動向、金利水準、海外株式市場の動きといった複数の要因によって決まります。そのため、常に支持率と株価が完全に連動するわけではありません。
しかしながら、相場の方向性を大きく捉えると、内閣支持率と株価のトレンドが一致する局面は少なくありません。特に、支持率が上昇基調にある局面では、政策期待や景気回復期待が高まり、株価が上昇しやすい傾向が見られます。
また、支持率の上昇は単なる政治指標の改善にとどまらず、「将来に対する安心感の高まり」として市場に受け止められることが多い点も重要です。投資家は将来の不確実性が低下すると判断したときにリスクを取りやすくなりますが、支持率の上昇はその一つのシグナルとして機能していると考えられます。
支持率が株価を押し上げる4つの理由
では、なぜ内閣支持率が高いと株価も上昇しやすいのでしょうか。その理由は複合的ですが、主に以下の点が挙げられます。
第一に、支持率が高い政権は政策運営が安定しやすく、財政政策や成長戦略が継続的に実行されるとの期待が高まる点です。政策の継続性が見込める環境では、企業も投資判断を行いやすくなり、結果として経済活動が活発化しやすくなります。
第二に、政治の安定は不確実性の低下につながり、投資家のリスク許容度を高めます。不透明感が強い局面では投資家は様子見姿勢を強めがちですが、政治が安定している局面では資金がリスク資産へ向かいやすくなります。
第三に、支持率の高さは「景気に対する国民の信頼感」を反映している場合が多く、消費や投資の拡大期待につながります。これは企業業績への期待を通じて株価を押し上げる要因となります。
さらに第四に、日本の政治や政策運営に対する信頼感が高まることで、海外投資家にとっても投資しやすい環境と評価されやすくなります。日本株市場では売買代金の多くを外国人投資家が占めているため、海外からの資金流入の増減は株価に大きな影響を与えます。内閣支持率の高さは、こうした海外投資家の日本市場に対する評価を高める要因の一つとして機能していると考えられます。
日本株の上昇基調が継続する可能性
足元の高市内閣の支持率を確認すると、直近2026年3月のNHK調査では59%(3月9日更新)となっています。依然として高い水準ではありますが、ピークと比較するとやや低下しており、2022年8月の第2次岸田内閣の際に記録した水準まで戻ってきた点は気になるところです。高市政権発足時には、成長戦略の強化や国内投資の促進、規制改革の推進といった政策への期待から、日本経済の再成長への期待が高まり、支持率も上昇しました。
もっとも、足元では食品価格の上昇を中心とした物価高により、生活コストの増加に対する不満が広がっており、これが支持率の低下圧力となっていると考えられます。4月1日からは食品や日用品を中心に値上げが相次いでおり、家計の負担感は一段と強まっています。加えて、中長期的には防衛費増額の財源として所得税の引き上げが議論されており、将来的な負担増への警戒感も無視できません。
このように、支持率には下押し圧力が存在するものの、依然として高水準を維持している点はポジティブに評価できます。今後も現在の支持率水準が維持されるのであれば、内閣支持率アノマリーが引き続き株価の支えとなり、日本株の上昇基調が継続する可能性が期待されます。政治動向と株価の関係は単純ではありませんが、支持率という指標を通じて相場の方向性を捉えることは、投資判断において有効な視点の一つになります。
