高市政権の財政規律を懸念した150円超「高市円安」
2025年10月、高市政権誕生のタイミングで150円を超える米ドル高・円安再燃となった。ただ、「高市円安」は日米金利差(米ドル優位・円劣位)縮小を尻目に広がったものだった(図表1参照)。
日米金利差縮小を尻目に広がった米ドル高・円安をある程度説明できそうなのは、日本の30年物国債など超長期国債価格の下落(利回りは上昇)だった(図表2参照)。高市政権は「責任ある積極財政」を主張したが、超長期国債価格は日本の財政規律への懸念が理由として下落した。その超長期国債価格下落と連動したように見えたことから、金利差縮小に反応せずに広がった「高市円安」の主因は、日本の財政規律を懸念した円売りと考えられた。
衆院選期の歴史的大勝で一段落した「高市円安」
ただ、そうした日本の超長期国債価格の下落は、衆院選挙で高市総理率いる与党が歴史的大勝となると一段落した。衆院で圧倒的マジョリティを得た高市政権は、野党への譲歩などにより財政規律を維持できなくなるリスクが低下したためとの見方が基本だった。
その後、いわゆる「イラン危機」発生により、インフレ再燃への懸念が高まると長期国債売りが再燃する場面もあったものの、4月以降それも沈静化した。一方で、米ドル高・円安はなお160円に近い水準での推移が続いたことから、ここに来て超長期国債価格と円安のかい離が目立ってきた。これは、日本の財政規律を懸念した「高市円安」が変わったということになるだろうか。
3月以降の円安は「イラン危機」と投機円売りが主因
超長期国債価格反発にもかかわらず続く円安傾向を説明できそうなのは、日米の金融政策を反映する2年債利回り差だ。「イラン危機」発生を受けて米インフレ再燃への懸念から、FRB(米連邦準備制度理事会)利下げ見通しが消滅し、一時利上げ見通しも浮上したことで日米2年債利回り差が3月以降拡大したことが、米ドル高・円安傾向を支えた形となった(図表3参照)。
そして、超長期国債価格反発にもかかわらず円安傾向が続いているもう1つの要因として、投機筋の円売り拡大もありそうだ。CFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋の円ポジションは、2月の衆院選挙で与党が圧倒的勝利を収める前までは売り越し(米ドル買い越し)最高も4万枚程度までにとどまっていたが、4月には一時その倍以上となる9万枚まで拡大した(図表4参照)。
日本の財政懸念「高市円安」の再燃はあるのか?
以上、2025年10月の高市政権誕生のタイミングで広がった150円を超える米ドル高・円安について振り返ってみた。当初米ドル高・円安の理由は、高市政権の「責任ある積極財政」を懸念した円売りだっただろう。それは2026年2月の衆院選挙での与党の歴史的大勝を境に一段落した。
それでも米ドル高・円安傾向が続いたのは、「イラン危機」発生を受けた米金融政策見通しの変化と、それを受けた日米金利差拡大を手掛かりとした投機筋の米ドル買い・円売り積極化だろう。「イラン危機」を受けた米金融政策見通しの変化や投機筋の円売り積極化は、高市政権とは直接関係ないだろう。
高市政権がきっかけになった円安を「高市円安」と呼ぶなら、それは財政規律への懸念に伴う円売りということになるだろう。しかし、衆院選挙以降一段落した。このまま「高市円安」一段落が続くなら、米ドル/円の行方は日米金利差や投機筋の動向次第というところになりそうだ。
