対米ドルで大きく売られたユーロ
代表的な為替市場の投機筋のポジション・データであるCFTC(米商品先物取引委員会)統計を用いて、2月末の米国とイスラエルによるイラン攻撃の開始前後で、主要通貨のポジション変化を調べた。その結果、米ドルに対して最も売られたのはユーロだった。
ユーロは米ドルに対して、イラン攻撃が始まる前の2月24日時点では15.6万枚の買い越しだったが、3月17日時点では買い越しが2.1万枚まで縮小した(図表1参照)。約3週間でユーロ買い越しが13.5万枚も縮小した計算だ。イラン攻撃開始以降、大規模な米ドル買い・ユーロ売りが発生したことを示すものと言える。
これは、イランによるホルムズ海峡封鎖などにより、原油やガスなどのエネルギー供給懸念が急拡大した影響が大きかったと考えれば、違和感のない結果だろう。ただ、それだけではなく、このイラン攻撃開始直前まで、米ドルに対してユーロ買い越しが15万枚以上と大幅に拡大していたことの反動の影響もあったのではないか。
イラン攻撃前のユーロ「買われ過ぎ」反動も影響か
イラン攻撃前の2月にかけて、米ドルに対して大幅なユーロ買い越しとなった背景には、1月23日の米通貨当局による円安けん制の「レートチェック」があっただろう。これを受けて米ドル安・ユーロ高が進み、一時1.2米ドルまで急拡大した影響が大きかったと考えられる。これに対してベッセント米財務長官は実際の米ドル売り介入を否定するとともに、強い米ドル政策不変を確認することで、円安けん制から一転して米ドル安けん制を余儀なくされた局面だった。
それだけ米ドル自体の地合いが脆弱だったため、ある意味では「第2の基軸通貨」であるユーロ買いが増えていたとも言えるのではないか。ところがそのユーロのアキレス腱でもあるエネルギー供給懸念が浮上したことでユーロ買いリスクの回避が必要となり、それが米ドル買い・ユーロ売り急拡大につながったということだろう。
主要通貨の中でユーロに次いで大きく売られた円
ユーロに次いで、イラン攻撃の前後に米ドルに対して大きく売られた主要通貨は円である。投機筋の円ポジションは、2月24日時点では1.1万枚の買い越しだったが、3月17日時点では6.7万枚の売り越しとなった(図表2参照)。米ドルに対して買い越しから売り越しに転換、さらにそれが拡大したことで、やはり大規模な米ドル買い・円売りが発生したと見られる。
日本の場合も、ユーロ圏同様にエネルギー供給リスクに弱いことで知られている。その意味では、ユーロとは違ってイラン攻撃前に大幅な円買いとなっていたわけではないものの、単純に円売りリスクを試す展開になった結果とは言えそうだ。
対米ドルで買われた豪ドル=「有事の米ドル買い」で説明できず
以上、イラン攻撃を前後して、対米ドルで大きく売られた主要通貨を見てきた。一方で、対米ドルで買い越しが拡大した通貨もあった。豪ドルの米ドルに対するポジションは、2月20日時点では5.2万枚の買い越しだったが、3月17日時点では6.9万枚と買い越しが拡大した(図表3参照)。
豪州は先週(3月16日週)利上げを決めるなど、金利差の観点から米ドルに対する優位性が評価された面はありそうだ。一方で、それとは別に代表的な資源国通貨ということから、エネルギー供給懸念に比較的強いという影響もやはりあったのではないか。以上のように見ると、イラン攻撃を前後した為替市場の動きを単純に「有事の米ドル買い」と呼ぶのも違うように感じられる。
