ECB=利上げ「ゼロ→3回」に急変

ECB(欧州中央銀行)の金融政策を反映する独2年債利回りは、米国とイスラエルによるイラン攻撃が2月末に始まるまでは、政策金利(中銀預金金利)である2%近辺での推移が続いていた。ところがイラン攻撃開始以降は急上昇となった。原油やガスなどエネルギー価格の高騰を受けてインフレ懸念が再燃したことで、金融引き締めを急ぐとの見方を受けた動きと言えるだろう。

3月19日に行われたECB理事会では政策金利の変更はなかったが、独2年債利回り上昇はむしろ一段と加速し、3月20日には2.6%以上に上昇した(図表1参照)。これは、0.25%×3回の政策金利引き上げを織り込む動きになっていると解釈される。イラン攻撃開始前の利上げ見通しゼロから、わずか半月余りで3回の利上げを早ければ4月から始めるという見通しに急変したことになる。

【図表1】米独の2年債利回り推移(2026年1月~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

FRB=利下げから利上げへ見通し転換

FRB(米連邦準備制度理事会)の金融政策の見通しも、やはりイラン情勢を受けて急変している。米2年債利回りは、イラン攻撃が始まる前までは、政策金利であるFFレートの誘導目標上限(3.75%)を下回る水準で推移していた。つまり、次の一手はFFレートの引き下げという利下げを想定していたわけだ。

ところが米2年債利回りも3月に入ってからは大きく上昇し、先週(3月16日週)はついにFFレート誘導目標の3.75%を上回る水準まで上昇した(図表2参照)。これは、「次の一手は利下げ」から「次の一手は利上げ」に転換したことを意味する。

【図表2】FFレートと米2年債利回り(2017年~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

金利差からかい離したユーロ安・米ドル高は変わるのか?

こうした金融政策の見通し変化は為替相場にどう影響するのか。2月末にイラン攻撃が始まってから、ユーロ/米ドルは独米2年債利回り差(ユーロ劣位・米ドル優位)が縮小する一方で、ユーロ安・米ドル高の動きとなっていた。これは金利差より、原油やガスの供給懸念の米国とユーロ圏への影響の差が意識された結果と考えられる(図表3参照)。

【図表3】ユーロ/米ドルと独米2年債利回り差(2026年1月~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

ただ、先週(3月16日週)は1.14米ドルから、一時は1.16米ドルまでユーロ高・米ドル安に戻す展開となった。これは、利上げ見通しの差を反映した独米金利差を意識し、ユーロ買い・米ドル売りへ流れが変わることを意味するのか。

エネルギー価格高騰など供給サイドの影響によるコスト・プッシュ・インフレは景気を悪化させる懸念もある。そうした中での利上げはさらに景気を悪化させる危険があるだけに、単純に金利上昇が通貨高をもたらすとは言い切れない面がある。その意味では、今回のイラン情勢を受けた金融政策見通しの変化が為替相場にどう影響するか、その見極めにはなお慎重さが必要なのかもしれない。

日銀=金融政策が変わらないという「不思議」

こうした中で、金融政策の見通しに比較的変化の少ないのは日銀だろう。日本の2年債利回りは、イラン攻撃開始前後で1.2%台での推移が続いている(図表4参照)。2026年に入ったばかりの頃は、「早ければ3、4月に追加利上げ」との見方が有力だった。しかし、2月中旬の植田日銀総裁との会談で高市総理が追加利上げに難色を示したとの一部報道などにより利上げ見通しがやや後退した。

【図表4】日米の2年債利回り推移(2026年1月~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

原油価格高騰を受けた物価上昇リスクという点では、ユーロ圏などと同様と考えられる。それでも利上げ見通しが拡大しないのは、やはり高市総理の「追加利上げへ難色」報道の影響が大きいのかもしれない。その意味では、トランプ米大統領による露骨な政治介入がある米国以上に、日銀の方が政治的圧力で独立性が揺らいでいるようにも見える。