経済安全保障の観点からも注目される「フードテック」
世界的な人口増加や気候変動などを背景に、「フードテック」への関心が高まりつつある。フードテックは「Food」(食品)と「Technology」(技術)を合わせた用語で、AI(人工知能)やIT(情報技術)などを活用し、これまでにない新しい食品や調理方法を開発する技術や概念のことを指す。
高市政権が重視する戦略17分野にも含まれ、食料安全保障と環境保全の両立を目指す。広義の「経済安全保障」の観点からも注目され、今後は周辺ビジネスの拡大が期待される。
世界的な人口増加と気候変動で高まる「食料供給リスク」
2025年12月の日本成長戦略会議でワーキンググループの設置が決まった。これを受けて、農林水産省で「第1回フードテックワーキンググループ」が開催されている。
事務局説明資料「フードテックをめぐる現状と課題等」によると、まず世界人口の増加や食生活の変化が課題として挙げられている。国連によれば2000年に61億人だった世界人口は、2022年に79億人となり、2050年には97億人に達する。一人当たりの食料供給量(需要量)は、1961年と比べ2020年に肉類が2.0倍、魚介類が2.3倍、野菜も2.2倍になっており、所得の向上とともに今後も急速な拡大が見込まれる。
一方で、世界の平均気温は上昇している。高温による品質の低下や降雨量の増加により、世界的に食料供給が不安定化するリスクが増大していると指摘する。
「フードテック」の主要4領域と、万博でも話題を集めた「新規食品」
戦略分野「フードテック」における「主要な製品・技術等」として「植物工場」「陸上養殖」「食品機械」「新規食品」の4領域が挙げられている。また、訪日旅行で日本食の評価が高まっていることを日本の強みとしている。2026年3月に実施された第2回ワーキンググループでは前述4領域の検討状況などが確認された。今後は2026年4~5月ごろに開催予定の第3回ワーキンググループで投資ロードマップを策定し、夏ごろに「成長戦略」を策定する予定となっている。
なお、新規食品では大豆を使った食品や培養肉などが該当する。大阪・関西万博では「培養肉未来創造コンソーシアム」が3Dバイオプリント技術を駆使して培養肉の実物やミートメーカー(コンセプトモデル)を展示した。3Dバイオプリント技術は、採取した動物の細胞から筋肉、脂肪、血管をそれぞれ培養し、実際の食肉の配置に近い形で組み合わせるというもの。これにより、赤身の間に脂肪が入り込んだ「霜降り」も再現可能になるという。
コンソーシアムに参加している上場企業は島津製作所(7701)、伊藤ハム米久ホールディングス(2296)、TOPPANホールディングス(7911)、シグマクシス・ホールディングス(6088)。
フードテック関連銘柄をピックアップ
三菱ケミカルグループ(4188)
人工光・閉鎖型苗生産装置「苗テラス」を開発。植物の生育に必要な環境を自動制御し、季節や天候に左右されることなく、いつでも・誰にでも簡単に、丈夫で均質な苗づくりができる。温度管理、照明、灌水、炭酸ガスの供給をすべて自動で行い、所定の日数で鉢上げなどに適した苗が完成するという。
Umios(ウミオス、旧マルハニチロ)(1333)
三菱商事(8058)との合弁会社で、富山県入善町に2500トン(原魚ベース)規模の陸上養殖施設を建設。報道によると2027年度の初出荷を目指している。養殖場で使用する水は黒部川の伏流水と富山湾の海洋深層水を活用する。清浄性・定温安定性という特徴がある。陸上養殖は夏場の水温上昇が課題で、水温管理に膨大な電力が必要となる。この課題を海洋深層水を使うことでクリアした。
ニッスイ(1332)
2025年10月に岩手県・陸前高田市でサーモン養殖事業を本格展開すると発表している。陸上にあるサーモン種苗生産施設「ニッスイ気仙川養魚場」を新設。陸前高田市や漁協と協力してサーモン養殖事業に種苗を供給する。2030年には他の場所も含め、1万トンの生産体制の実現を目指している。
ニチモウ(8091)
水産加工機械、シュウマイなどの中華総菜成形機、豆腐製造装置などの食品加工機械を提供。特に食品工場向けの自動化・省人化ロボットシステムに実績がある。自動化・省人化を目的とするだけでなく、人が作業しないことで衛生的な工場内環境を構築できる。
伊藤ハム米久ホールディングス(2296)
大豆ミート「まるでお肉!」を展開している。肉のような噛み応えを実現し、長年培ってきた肉への味付けを大豆ミートに応用した。2025年大阪・関西万博のORA外食パビリオンに「宴バーガー」ブースを出店。大豆ミートをベースに「大阪らしさ」や「日本の伝統食材」を加味したハンバーガーや包みピザを提供した。
日本ハム(2282)
新たなたんぱく質の研究開発を進めている。動物の細胞を培養して作る「機能性食品」へ展開している。畜産と比べて環境への負荷を抑えながら動物性たんぱく質を供給できる手段として期待されている。2022年、培養液に必要だった動物の血液成分(血清)を、一般の食品成分に置き換えることに成功。細胞性食品の生産に必要な材料を安価かつ安定的に調達する方法を見出し、実現に向けて前進。現在は試作品を作る段階。
不二製油(2607)
大豆ミートで国内シェア首位。栄養価が高く、地球環境負荷も低い「大豆」の価値に早くから注目。1957年に研究に着手し、植物性油脂と大豆たんぱくの技術を蓄積。大豆ミートの素材である「粒状大豆たんぱく」、肉に近い食感に仕上げた肉状組織たんぱく製品「フジニック」を発売。食品メーカーや外食産業などに向けて、業務用として提供している。ミートフリーのハンバーグ、から揚げ、カツなどを展開。
