2024年までとは違う円安阻止介入の判断
日本の通貨当局が、2022年、2024年に円安阻止の米ドル売り・円買い介入を行ったのは、米ドル/円が過去5年の平均値である5年MA(移動平均線)を3割程度と大きく上回った局面だった。これに対して、今回4月30日に円安阻止の介入を開始したのは、5年MAを15%程度上回ったに過ぎない局面だった(図表1参照)。
似たようなことが、より短期の移動平均、120日MAとの関係でも指摘できる。2022年、2024年の米ドル売り・円買い介入は、基本的に120日MAを5%以上上回ったところで行われた。これに対して、今回の介入は米ドル/円が120日MAを2%程度と小幅に上回るところで行われたとみられている(図表2参照)。
円安「行き過ぎ」不十分での介入は失敗するのか?
2024年までの円安阻止介入が、短期及び長期移動平均線を一定水準以上に大きく上回ったところで行われたのは、米ドル高・円安の「行き過ぎ」に注目していたことを感じさせる。米ドル/円が移動平均を大きく上回るほど、米ドル高・円安の「行き過ぎ」懸念の拡大を示している。介入はそうした「行き過ぎ」を円安阻止に活用したと考えられた。
為替介入の効果が疑問視されるのは、巨大化した為替市場の流れを変えるには無理があるのではないかということだ。その割に、2022年、2024年と為替介入が円安を止めて円高に反転させることに成功したのは、これまで見てきた短期および長期の円安「行き過ぎ」修正の活用に成功したことが一因だったのではないか。
では、今回はどうだろうか。5年MAや120日MAとの関係からすると、今回は米ドル高・円安「行き過ぎ」懸念が強まる前に円安阻止介入に出動したとみられ、その意味では2024年までの介入判断とは異なると考えられる。では、なぜ介入判断は変わったのか、そして、「行き過ぎ」懸念がそれほど強くない中での介入で円安を止めることができるのか、という疑問が浮かぶのは当然だろう。
介入判断が変わった2つの理由
5年MAを参考に、2024年までと同様に「行き過ぎ」を活用して介入により円安を止められるのは、当面においては180円程度ではないか。それは最早容認できない、今は円安が収益にプラスになる輸出企業も含めて、さらなる円安は好ましくないとの評価が大勢になっている、それが当局の判断になったと考えられる。
もう1つは、米国との関係だろう。1月23日、2026年に入り最初に160円に迫る円安となったところで、日米の通貨当局はそれをけん制する「レートチェック」に動いた。これは、基本的に円安阻止で日米の利害が一致している可能性を示している。
円安阻止の選択肢を増やす=円安を160円で止められるのか
以上を踏まえると、今回は2024年までとは異なる判断で日本の当局も円安阻止に動いた可能性があるだろう。では、それは成功するのか、それとも失敗に終わることになるのか。
これまでのように、「行き過ぎ」を円安阻止に活用し、日本の単独介入でも円安阻止ができたことと今回は違うという自覚が当局にはあるようだ。これまでにも、原油高是正を円安是正に活かすとの意味での原油先物市場への介入、それを一部メディアは「奇策」としていたが、これらは明らかに2024年までと異なり、日本単独介入での今回円安阻止は困難で、円安阻止・是正の選択肢を増やす必要のあることを自覚した結果だろう。
足下において、160円は2024年のように極端に行き過ぎた円安ではなく、その意味では日本単独介入で止めることは難しいだろう。それを自覚した上でなお、160円で円安を止めるためには何が必要か。日米協調介入はあるのか。通貨当局は今、そうしたことを考えているのではないか。
