相場は依然としてボラティリティの高い展開にあります。米国においてはAI関連株への高値警戒感が高まり、日本においても財政規律緩和懸念が円安をもたらすなど、先行不透明感は急速に高まってきたというところでしょうか。もちろん、これまでの高パフォーマンスに対する日柄調整という色彩も無視できないと考えます。前回のコラムでは、当面は調整色の強い神経質な展開になると予想し、しばらくは「休むも相場」と割り切るのも一手と指摘しました。現時点においてもこの見方に変更はありません。むしろ丹念に銘柄研究をする好機と前向きに捉えたいと考えます。

潜在成長余地が非常に大きい国

そこで今回は、「インド」をテーマに取り上げてみたいと思います。インドは気になるテーマではあったのですが、なかなかゆっくりと銘柄研究をする時間がありませんでした。「休むも相場」と位置付ける今こそ、このテーマについての深掘りをしてみたいと考えます。

インドは言うまでもなく、南アジア最大の国土を有し(世界7位)、14億人超という世界最大の人口を抱える大国です。しかも国民平均年齢(中央値)はおよそ30歳という非常に若い国でもあります。広大な国土、膨大な人口、若い年齢という条件から、経済的な潜在成長余地は非常に大きいと目される国と言えるでしょう。

実際、既にIMF統計でインドはGDPは世界第5位という経済大国で、2025年には日本を抜いて世界4位になるともされていますが、一人当たりGDPはまだ145位にとどまっています。内需拡大余地は依然大きく、それらが今後の経済発展を牽引する可能性は十分に感じられます。そうした観測から、GDPは2030年までに世界3位に、2050年までに世界2位にまで浮上するとの予測もなされています。

かつて中国も経済成長期待を世界中から集めましたが、それと同じ現象と言えるのかもしれません。なお、中国がGDPで世界5位に到達したのは2005年で、この時の一人当たりGDPは世界123位でした(現在はそれぞれ2位、74位)。その後の中国の躍進は周知の通りです。まさにこれと似た成長がインドにも期待されるのです。

異なる文化・宗教・商習慣、中国進出の経験を踏まえ慎重な日本企業

当然、日本企業においてもインドは成長力の高い魅力ある市場に見え、既に多くの企業がその果実を求めて布石を打ってきています。ただし、商習慣や文化・宗教も異なる外国でのビジネスには難しいものがあり、成長する現地の競合企業とどうすみ分けていくのかといった問題も横たわります。

かつて中国市場に対しては、2000年代に潜在市場の大きさに惹かれて「猫も杓子も中国進出」といったブームが発生しました。しかし、上記の各種問題を軽視した結果、手痛い授業料を払って撤退したという事例もまたたくさんあったのです。20数年の学習を経て、非欧米圏の潜在市場獲得に対してのノウハウが着実に積み上がった結果、日本企業はより慎重にインド進出に対応しているように思えます。ましてインドの文化や宗教、国民性などは日本にあまりなじみもありません。インド市場進出に関しては、中国進出とは異なる展開になる可能性は高いと考えます。

インド市場獲得のアプローチは2通り

具体的な日本企業のインド市場獲得のアプローチは2通りあります。日本から製品・サービスを提供するという輸出型と、現地拠点を確保して対応するというローカル型です。前者は一般的な輸出と構造が変わらないため、リスクのコントロールは比較的容易です。しかし、これでは機動的かつ柔軟な対応には制約があり、成長市場でリターンを最大化するというには物足りません。

一方、ローカル型は単独出資や現地企業への資本参加という形で現地にコミットし、その地域で利益の最大化を図るというものになります。当然、現地でスタッフや資本を抱えることになるためにリスクは飛躍的に高まりますが、市場へのアクセスは容易になります。

一般的には、まず輸出型で市場の感触を確かめたうえで、リスクを見極めてローカル型に発展させるというのが常道ですが、いきなりローカル型というケースを選ばざるを得ない産業もあります。インド関連で株式投資を考えるうえでは、対象企業がどのようなアプローチで臨んでいるのか、リスクとリターンのバランスはどうかなどを確認しておくことが重要でしょう。

インド関連銘柄をピックアップ

インド関連企業としては、ローカル型の成功例として挙げられることの多いスズキ(7269)がまずその筆頭に挙げられるでしょう。スズキが54%を出資するインドの自動車メーカー、マルチ・スズキは、インド市場で40%超のシェアを有し、現在は累計販売台数3,000万台超の大企業に成長しています。現在、スズキ全社売上に占めるインド事業の比率はなんと4割を超えています。また、関西ペイント(4613)もローカル型で有名です。関西ペイントのインド拠点は前述のスズキのインド子会社を主要顧客とし、全社売上の4分の1をインドで稼ぎ出すに至っています。

この他、インドの貢献が全社売上の10%を超える企業としては、輸送用機器部品のエフ・シー・シー(7296)、射出成型機の日精エー・エス・ビー機械(6284)、通信機器のASTI(6899)、工業ミシンのJUKI(6440)、システム開発のCAC Holdings(4725)、ゼラチン国内トップの新田ゼラチン(4977)、車載用半導体・電装品の新電元工業(6844)、人工ダイヤモンドのイーディーピー(7794)などが挙げられます。

売上比率10%に迫る、あるいはインドとは特定されませんが、周辺地域への売上比率の高い企業としては三井金属(5706)、ミクニ(7247)、ユシロ(5013)、横浜ゴム(5101)、ブリヂストン(5108)などの銘柄にも要注目でしょう。ただし、成長著しいインド経済ですので、こうしたプレイヤーの面々はどんどん変化する可能性もあります。随時確認されることをお忘れなく。