モトリーフール米国本社 – 2025年11月9日 投稿記事より

ショッピファイは成長企業の進化モデル

ショッピファイ[SHOP]は、もともと起業家がオンラインで商品を販売するためのシンプルな仕組みとして始まりました。やがて、そのビジョンは拡大し、「加盟店のストア構築支援」から、「グローバルな商取引を支えるデジタル基盤の構築」へと発展してきました。

今日、ショッピファイは静かに、より大きな存在へと進化を遂げています。それは現代の小売業務を支える基盤インフラです。アマゾン・ドットコム[AMZN]が、「人々が買い物をする場所」だとすれば、ショッピファイは、「インターネット上の取引をつなぐ、OS(オペレーティングシステム)」へと成長しつつあります。

長期投資家にとって、この「ストア構築ツール」から「コマースOS」への変革は、今後10年のショッピファイのビジネスモデルを大きく塗り替える可能性があります。

ソフトウェア・プラットフォームからコマース・インフラへ

ショッピファイの進化の核には、いつも「複雑なものをシンプルにすること」という思想があります。中小企業向けにテンプレートやホスティングを提供するeコマースSaaS(サービスとしてのソフトウェア)プロバイダーとして始まった事業は、今ではスタートアップから大企業まで対応可能な、拡張可能なモジュール式API(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)駆動型エコシステムへと成長しました。

2025年には「パートナーソリューション」センターを立ち上げました。これは、大手小売業者がグローバルなシステムインテグレーターを通じて、あらかじめ構築されたアクセラレータ(導入パッケージ)を展開できるようにするハブで、同社がエンタープライズ向けのインフラ分野に本格的に進出していることを明確に示すものです。さらに「コマース・コンポーネント」の提供はさらに進んでおり、大手ブランドは自社の技術スタック全体を置き換えることなく、必要な機能だけ(決済、分析、ストアフロントAPIなど)を取り入れることが可能となっています。

このアプローチは、アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)がクラウド分野で行ったこととよく似ています。複雑な部分を抽象化し、最高水準のモジュールを提供することで、企業の迅速な拡張を可能にします。インフラはソフトウェアとは異なる収益構造を持ち、高い営業レバレッジ、継続的な利用料、顧客の囲い込みといった特性を生み出します。ショッピファイは、もはや単なるストアをホスティングする会社ではなく、インターネット上の「コマース・プロトコル」へと進化しつつあります。

決済事業「Shop Pay」の拡大が成長の中核エンジンに

この新たなアーキテクチャにおいて特に注目すべき要素が「Shop Pay」です。当初はShopifyストア向けに設計された「Shop Pay」は、今や本格的な決済・本人確認ネットワークへと成長しました。2025年4月にはショッピファイとアファーム・ホールディングス[AFRM]が複数年にわたる提携を延長し、米国・カナダにおける「Shop Pay」内での「後払い(BNPL)」機能の独占的権利をアファームに付与しました。これにより、国際展開の基盤が整いつつあります。さらに最近では、ショッピファイがグローバル・イー・オンライン[GLBE]と提携し、ショッピファイのエコシステム外にいる加盟店にも「Shop Pay」のワンクリック決済を提供できるようにしました。

これらの取り組みは、ショッピファイが単なるストア運営だけでなく、決済、支払い手段、そしてデジタルIDといったコマースの根幹レイヤーまで掌握しようとしていることを示しています。

投資家にとってこれが重要な理由は、以下の通りです:

・決済事業は効率的に規模を拡大できます。利益率が高く、継続的に収益が上がり、かつ資本をほとんど必要としません。

・利用が広がるほど定着率が高まります。一度「Shop Pay」を利用し始めた販売者と購入者は、他社サービスへの切り替えは困難となります。

・データが蓄積して価値が増します。各取引から得られる貴重なデータがショッピファイのエコシステムにフィードバックされ、AIツールやパーソナライゼーションの性能向上につながります。

「Shop Pay」の重要性は、2020年にショッピファイ全体の流通総額(GMV)に占める「Shop Pay」の比率が45%だったのに対し、2024年には62%にまで拡大したことからも明らかです。この期間はGMV自体も大きく成長しています。この実績は、「Shop Pay」が単なる利便性機能ではなく、ショッピファイの長期的な経済基盤を強化する中核的な成長エンジンであることを示唆しています。

加盟店の増加によりアプリや機能連携により利便性が高まり、利益率が向上

ショッピファイを利用する加盟店が増えれば増えるほど、そのエコシステムは強化され、開発者が集まり、より多くのアプリ連携や機能連携が生まれます。同様に、Flexport(未上場)、アルファベット[GOOGL]傘下のグーグル、バイトダンス(未上場)傘下のTikTokといった物流・マーケティングパートナーもショッピファイの影響力をさらに広げています。

さらに最近では、ショッピファイが人工知能(AI)インフラへの投資を強化したことで、この好循環がさらに強固になりました。同社が最近発表した「Model Context Protocol(MCP)」により、パープレキシティAI(未上場)などの外部のAIショッピングエージェントがショッピファイのストアフロント・データに直接アクセスできるようになりました。これにより、購入者はオンライン上のどこからでもAIを利用して商品を探索でき、ショッピファイのシステムがバックグラウンドで決済を処理します。

この「フロントエンドの多様性とバックエンドの統一性」というアプローチにより、ショッピファイは現代のeコマースにおいて不可欠なインフラへと変貌を遂げています。新たな連携が加わるたびに利便性が高まり、利益率は向上し、プラットフォームは代替されにくい強靭性を獲得しています。

ショッピファイが魅力的な成長株の1つと考えられる3つの理由

ショッピファイは単に販売者のオンライン販売を支援するだけでなく、運営管理も支援する存在にもなっています。同社は商品、決済、物流、そして今やAIまでをインターネット上で結びつける目に見えない基盤となる「コマースのOS(オペレーティングシステム)」を構築しているのです。

この静かな変革が意味するものは次の通りです。

・「Shop Pay」、エンタープライズ向けAPI、データ分析といった高付加価値サービスによる利益率の拡大。

・インフラ収入の拡大による収益の安定性向上。

・ショッピファイのストア以外の領域でも商取引を支えることで、対象市場が拡大すること。

長期投資家にとって、ショッピファイは世界的な小売テクノロジー分野において、最も魅力的な成長株の一つであるといえるでしょう。

免責事項と開示事項  記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。元記事の筆者Lawrence Ngaは、記載されているどの銘柄の株式も保有していません。モトリーフール米国本社はアルファベット、アマゾン・ドットコム、グローバルEオンライン、およびショッピファイの株式を保有し、推奨しています。モトリーフールは情報開示方針を定めています。