IT革命と世間は騒がしいですが、IT革命の本質とはなんでしょうか?不可能だったことを可能にする技術でしょうか?いつでもどこでもという利便性でしょうか?私は究極的には「効率性の向上とコストの削減」だと考えています。一番高いコストは「人」ですから、それは即ち「必要な人手が少なくて済む」ということです。逆に言うと人員整理を伴わないIT革命は、うわべだけのお祭りになってしまう危険性があると思います。IT革命が正しく行われると、この意味で当初はデフレ圧力の方が大きいと思います。
その次のステップとして整理された人員が付加価値のある新しいビジネスを興すことにより、ボトム・アップ型で経済全体の規模が大きくなって行く、それが理想型だと思います。90年代初頭にホワイト・カラーのリストラが進んだアメリカにおいて、人員整理の対象となった多くの人がシリコン・バレーなどに行き全く新しいビジネスを興して現在の底堅いアメリカ経済の基礎を創ったのと同じです。
この問題はタブーなのか、あまり議論されません。しかしちゃんと正視して前向きに取り組むべきだと私は思います。
- 松本 大
- マネックスグループ株式会社 取締役会議長 兼 代表執行役会長、マネックス証券 ファウンダー
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ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社を経て、ゴールドマン・サックス証券会社に勤務。1994年、30歳で当時同社最年少ゼネラル・パートナー(共同経営者)に就任。1999年、ソニー株式会社との共同出資で株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)を設立。2004年にはマネックス・ビーンズ・ホールディングス株式会社(現マネックスグループ株式会社)を設立し、以来2023年6月までCEOを務め、現在代表執行役会長。株式会社東京証券取引所の社外取締役を2008年から2013年まで務めたほか、数社の上場企業の社外取締役を歴任。現在、米マスターカードの社外取締役、Human Rights Watchの国際理事会副会長、国際文化会館の評議員も務める。