モトリーフール米国本社– 2025年9月27日 投稿記事より

AI保険ボットから創薬まで―既存AI技術で非効率を変革する割安銘柄10選

米半導体大手のエヌビディア[NVDA]やIT大手のマイクロソフト[MSFT]がAIの話題を独占していますが、AI技術を使って特定の問題を解決している中小型株も今後注目される可能性があります。今回紹介する10社は、AI基盤モデルの開発やAI半導体の設計を手掛けているわけではありません。むしろ、既存のAI技術を活用し、非効率な業界や時代遅れなプロセスを変革しているのです。

保険引受業務から創薬に至るまで、各社はAIを単なる響きの良いマーケティング用語ではなく、競争力を高める実際に武器として活用しています。これらのあまり知られていない10社が、次のAIの勝ち組を探すグロース株志向の投資家から注目される理由はここにあります。

1. フレッシュワーク・インク[FRSH]:業務の自動化を可能にする

フレッシュワーク・インク[FRSH]は、カスタマーサポート、ITサービス管理、顧客関係管理(CRM)向けソフトウエアをサービスとして提供するSaaSプラットフォームで、世界中に6万8,000社を超える顧客を持ちます。同社の「フレディAI」は、セールスフォース[CRM]やサービスナウ[NOW]といった大手が見落としがちな中小企業でも、大企業並みの高度な自動化を利用できるようにします。同社は売上高が年率10%台半ばで成長しており、利益率も改善傾向にあることから、AI戦略が奏功しつつあることがうかがえます。ただし、まだ黒字化には至っていません。

2. オスカー・ヘルス・インク[OSCR]:ヘルスケア業界の創造的破壊者

オスカー・ヘルス・インク[OSCR]は、テクノロジーを活用した医療保険会社であり、保険加入者と医療機関とのやり取りの簡素化に注力しています。同社の新AIアシスタント「スーパーエージェント」は、サービスコストの削減と処理速度の向上を実現し、非効率で知られる医療業界で大きな優位性を得る可能性があります。医療費の高騰と事務負担の増大に悩む中、オスカー・ヘルス・インクの「AIファースト」戦略が期待通りの成果を上げれば、同社は大きな市場シェアを獲得することができるかもしれません。

3.ナーディ・インク[NRDY]: 家庭教師や教育サービスの幅を広げる

オンライン教育プラットフォームを展開するナーディ・インク[NRDY]は、「ヴァーシティ・チューターズ」を運営し、AIを活用した「ライブ+ AI」プラットフォームを通じて、家庭教師や教育サービスの幅を広げています。現在、複数の学区がAIチューター(家庭教師)の試験導入を進めており、同社は個別対応と自動化された学習というエドテック(エデュケーションとテクノロジーの造語)の波に乗っています。ナーディ・インクは、人間の専門知識とAIの拡張性を融合させることで、1,000億ドルの規模を持つ家庭教師市場で差別化されたビジネスモデルを築いています。

4.レモネード[LMND]:保険業界を変革する

レモネード[LMND]は、AIボットを活用して保険契約の引受、請求対応、顧客の登録手続きを行うデジタル保険会社です。自動化によって損失率が安定すれば利益率が拡大する可能性があり、金融サービス分野における有望なAI銘柄となり得るでしょう。ただし、AIが実際に引受精度を向上させられるかどうか、現在の評価額に見合う急成長を維持できるかどうかという点が課題として残っています。

5.リカージョン・ファーマシューティカルズ[RXRX]:創薬を加速する革命児

リカージョン・ファーマシューティカルズ[RXRX]は、AIと膨大な独自データを活用して創薬プロセスを加速させるバイオテクノロジー企業です。エヌビディア[NVDA]とのスーパーコンピュータ規模の提携により、同社はAI主導の医療分野でリーダー候補と注目されています。本稿執筆時点の時価総額規模は約20億ドルと小規模です。しかし、臨床試験が成功すればAIによる創薬アプローチの有効性が証明され、株価上昇につながる可能性があります。

6.ビッグベア.ai[BBAI]:防衛分野にインテリジェンスを提供

ビッグベア.ai[BBAI]は、米国国防総省や産業界のクライアント向けに、意思決定支援プラットフォームと分析サービスを提供しています。防衛分野のデジタル化が加速する中、同社のAIを活用したミッション(任務)計画や予測システムは、明確な成長の可能性をもたらしています。ただし、政府契約の不安定さや経営執行リスクがあるため、収益が不安定になりやすく、変動を許容できる投資家にのみに適した銘柄と言えるでしょう。

7. アンプリチュード[AMPL]:製品を最適化するプラットフォーム

アンプリチュード[AMPL]は、企業がユーザーのエンゲージメントや購入率を最適化できるよう支援するプロダクト分析ソフトウエアを提供しています。同社の新しいAIエージェントは、自動的にインサイト(洞察)を生成し、改善のためのテスト方法(エクスペリメント)を提案したりするなど、AIによる高度な分析の強化に期待する投資家の関心を集めています。文書・画像処理ソフトウエア大手アドビ[ADBE]や無料の代替サービスとの競争によりが価格面での圧力が生じているものの、製品を重視するアプローチによって差別化を維持しています。

8.ページャーデューティー[PD]:インシデント対応を迅速化する

ページャーデューティー[PD]は、開発と運用を統合したソフトウエア開発企業です。サイバー攻撃やシステム障害といったインシデントを管理する同社のプラットフォームは、数千社の企業に利用されています。

同社のAIアシスタントと自動化ツールは障害対応時間を短縮し、企業にとって測定可能な投資対効果(ROI)を生み出しており、顧客企業から高い評価を得ています。同社はAI主導の運用体制へとシフトしており、ますます複雑化する技術面の問題を迅速に解決したいという企業ニーズに応える体制が整いつつあります。

9. スプリンクラー[CXM]:顧客体験を統合・最適化する

スプリンクラー[CXM]は、世界的なブランド企業に利用されている統合型顧客体験管理プラットフォームを運営しています。SNSなどでの顧客の声の収集、分析、対話をAIで行い、同社は企業が顧客と相互に対話する関係を構築するための中心的存在となっています。マクドナルド[MCD]やナイキ[NKE]などの世界的ブランドが顧客に名を連ねており、スプリンクラーはマーケティング分野におけるAI活用拡大の恩恵を受ける立場にあります。

10.イノデータ[INOD]:データインフラの投資対象

イノデータ[INOD]は、大企業やAI開発者向けにデータエンジニアリング、コンテンツサービス、AIモデルの学習用データセットを提供しています。高品質な学習データへの需要が急増する中で、同社はニッチなデータインフラ分野での役割を担っており、AI導入の隠れた恩恵を受ける存在とされています。

ニッチな専門領域で、課題を解決

これら10社は、AI分野でエヌビディアと覇権を競う必要はありません。各社がAIを活用して特定のビジネス上の課題を解決しており、巨大市場の中で模倣が難しいニッチな専門領域を築いています。

レモネードやオスカー・ヘルス・インクは保険業界の逆風に直面しており、リカージョン・ファーマシューティカルズは臨床試験の成功に左右され、ビッグベア.aiは政府契約に依存しているなど各社のリスクの種類はさまざまです。しかし、複数の銘柄に分散投資することで、単一銘柄の急落リスクを抑えることができるでしょう。

免責事項と開示事項  記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。元記事の筆者George Budwellはレモネード、マイクロソフト、エヌビディアの株式を保有しています。モトリーフール米国本社はアドビ、レモネード、マイクロソフト、ナイキ、エヌビディア、セールスフォース、サービスナウの株式を保有し、推奨しています。モトリーフール米国本社は、次のオプションを推奨しています。マイクロソフト2026年1月限月395ドル・コールオプションのロング、マイクロソフト2026年1月限月405ドル・コールオプションのショート。モトリーフール米国本社は情報開示方針を定めています。