10月効果、「10月の相場は荒れやすい」

今回から、この連載を通じて、株式市場のアノマリー(株価のジンクス)を紹介していきます。古くから当たり前のように言われているアノマリーも、本当に正しいものでしょうか。この連載ではアノマリーの検証を行います。そして市場で、まだ気付かれていない新しいアノマリーも発見もしていく予定です。

10月相場がスタートを迎えます。10月に代表的なアノマリーの1つに、米国市場で発祥の「10月効果」があります。「効果」と言われても、実は投資家にとって嬉しいものでないのかもしれません。10月効果とは「10月の相場は荒れやすい」というアノマリーです。米国で言われ始めて、日本でも知られるようになったものです。そこで、先ずはNYダウを使って検証を行いました。

米国発祥の10月効果、NYダウで検証

相場は荒れやすい、ということは、「株価が大きく下げる場面にもなりがち」ということです。そこで次の方法で検証を行いました。

先ず1900年から直近までのNYダウの日次騰落率を取得しました。この間にトータルで3万1581立合日ありますが、そのうち下落率が上位から50日までの日が、どの月に該当するかを調べてみました。3万1581立合日のうち上位50日は割合として0.16%に過ぎないのですが、それほど小さい確率で大暴落した日を取り上げます。

過去、下落率が最も大きかった日は、1987年10月19日のプログラム売買の連鎖的売りで起きたブラックマンデーです。当時、NYダウが1日で22.6%急落しましたが、10月に発生したものです。図表1の青棒グラフで下落率トップ50の月別回数を見ると10月は13回と突出しています。10月は下落率が大きい日が特に多かった月であったことから、確かに、「10月は株価が大きく下げる場面になりがち」だったことが分かります。

【図表1】NYダウの日次下落率・上昇率上位50の月別日数
注1:棒グラフに付された数字は日数
注2:分析期間は1900年以降、2025年9月22日まで
出所:Bloombergを用いて、マネックス証券作成

日本市場でも10月効果は顕著、日経平均株価で検証

米国市場で見られた10月効果は日本市場にも見られるでしょうか。そこで日本市場でも同じ方法で検証しました。第2次世界大戦後に東証が再開した1949年から直近までの日経平均株価を使った検証です。

図表2の結果の通り、日本でも10月効果が見られました。下落率上位50のうち10回が10月に発生しており、10月に株価が大きく下げる場面が見られたことが分かります。

【図表2】日経平均株価の日次下落率・上昇率上位50の月別日数
注1:棒グラフに付された数字は日数
注2:分析期間は第2次世界大戦後に東証が再開した1949年以降、2025年9月22日まで
出所:Bloombergを用いて、マネックス証券作成

10月効果、主な2つの理由

過去に4回の急落が起こり、相場が荒れやすい

10月に株価が大きく下げる場面が見られがち、ということには次の理由があります。

投資家の過去の記憶から「10月は急落するかもしれない」という先入観があるからです。過去を振り返ると、1929年の世界大恐慌は1929年10月24日にNY株が急落したことが始まりでしたが、これも10月に発生しました。先ほども触れましたが、過去最大の下落となった1987年のブラックマンデーも10月でした。

また、2008年9月に米大手投資銀行リーマン・ブラザーズが経営破綻したことをきっかけに、世界的金融危機が起こりましたが、10月に急落が相次いだことも投資家の間では記憶に残っています。

このような過去の経験から、10月は投資家にネガティブな心理的バイアスがかかり、「急落するかもしれない」という気持ちから、株式を手仕舞っておこうとする姿勢が相場下落の背後にあります。

ヘッジファンドの決算の影響を受けやすい

それ以外の理由としても、株式需給面から、11月に決算を迎えるヘッジファンドが多いため、10月に解約されたファンドの資金引き上げの売りが出やすいという事情などもあります。

10月は下げるケースもあるが、リバウンドも多く下落トレンドにあるわけではない

しかし、10月効果は「相場が荒れやすい」という意味で、「相場が下がる」というアノマリーではありません。図表2で日本市場の結果を、いま一度確認しましょう。

先ほどは下落率上位50日の月別回数を見ましたが、反対に上昇率上位50日の月別回数を集計しました。図表2の赤棒グラフから過去の上昇率上位50日のうち8日間が10月に発生していることが示されます。3月の10日には及びませんが、他の月と比べて2番目に多い月です。

図表1で米国市場を確認しても、赤棒グラフから上昇率上位50日のうち11回が10月に発生しており、10月は最も多い月となっています。

10月は下落率が大きい日も多かったのですが、上昇率が大きい日も多く見られることが分かりました。このように相場の変動が大きく、10月は相場が荒れやすいことから、日米共に10月効果が確認できました。株価が上昇する日も多かった背景には、株価急落に対するリバウンドが大きな理由です。

10月の平均騰落率から考える投資戦略

図表3に日経平均株価の月別騰落率の平均を示しました。10月の平均騰落率は高くはありませんが、プラス圏にあります。10月は月間を通じて下げる傾向があるというわけではありません。

そこで10月効果を利用した投資戦略を考えてみます。株価が大きく下げた時はリバウンド狙いの積極的な投資スタンスが効果的でしょう。

【図表3】日経平均株価の月別平均騰落率
注:分析期間は第2次世界大戦後に東証が再開した1949年以降、2025年8月まで
出所:Bloombergを用いて、マネックス証券作成