先週週前半の株価は方向感を欠く展開に、ウォルマート[WMT]の決算発表も投資家心理に影響

先週(8月18日週)の米国株式市場は、大きな転換点を迎えました。週の前半から8月22日(木)までは、金利や景気に対する懸念が重しとなり、株価は方向感を欠く展開に。FOMC(米連邦公開市場委員会)議事要旨では「利下げに慎重な姿勢」が示され、連銀高官からもタカ派的な発言が相次いだことで、9月利下げへの期待は後退しました。

さらに、世界最大の小売店ウォルマート[WMT]の決算が市場予想を下回り、米国消費の強さに疑問符がつくと投資家心理は一段と冷え込みました。

また、これまで市場全体をけん引してきたテクノロジーセクターでは、パランティア・テクノロジーズ[PLTR]やアドバンスト・マイクロ・デバイシズ[AMD]などに利益確定の売りが集中し、ここ数ヶ月で積み上がったバリュエーションの高さが意識されました。市場全体を押し上げてきたIT銘柄の失速は、投資家心理に冷や水を浴びせる形となったのです。

ジャクソンホール会議で投資家心理が転換、ダウ平均など株式市場は急反発

しかし、8月22日(金)のジャクソンホール会議でのパウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長の発言が流れを一変させました。パウエル議長は「金融政策はすでに十分に引き締め的であり、雇用や景気にも配慮する必要がある」と発言。これは事実上「利下げ開始を容認するサイン」と受け止められ、9月利下げ観測は一気に高まりました。このメッセージをきっかけに投資家心理は劇的に改善し、株式市場は急反発し1週間を終えました。

ダウ平均は800ドルを超える上昇で史上最高値を更新し、S&P500やナスダックも大幅に切り返しました。週間ではS&P500が+0.27%、ナスダック100はー0.9%と下落した一方で、NYダウは+1.53%の上昇。さらにラッセル2000は+3.3%と大型株を大きく上回りました。

銀行、住宅など「利下げメリット銘柄」が週末相場を牽引、AI関連や半導体株もリバウンド

セクター別では、8月22日(金)にはまず金利敏感株に資金が流入、銀行、住宅、不動産、公益といった分野が一斉に買い戻され、「利下げメリット銘柄」が週末相場を牽引しました。中小型株も資金調達コストの低下を織り込み、強い値動きを見せました。対照的に、エネルギー株は原油価格の軟調さや景気減速懸念を背景に買いが入りにくく、相場全体の流れに乗り切れませんでした。

週初には「バリュエーション過熱」で売られていたAI関連や半導体株ですが、米政府がインテル株を約10%取得するとのニュースが追い風となり、買い戻しの動きが広がりセクター全体で力強いリバウンドが確認されました。

今週のフォーカスはエヌビディア[NVDA]の決算とPCEデフレーター

今週(8月25日週)は、市場の方向性を占う2つの重要イベントが控えています。

NY時間8月27日(水)引け後は世界が注目する、世界最大の時価総額を誇るエヌビディア[NVDA]の決算発表が行われます。生成AI需要の持続力、新世代GPU「Blackwell(ブラックウェル)」の供給体制、粗利率の動向が注目されます。AIインフラ投資の強さが確認されれば、半導体セクター全体を押し上げる要因となりますが、需要鈍化や在庫調整が示されれば、再びテクノロジー株に調整圧力がかかる可能性があります。

また、8月29日(金)にはコアPCEデフレーターの発表があります。これはFRBが最も重視するインフレ指標であり、9月利下げを判断するうえでの決定的材料です。予想以上にインフレが粘着的なら「利下げ幅は限定的」となり、市場は反落する可能性があります。逆に、落ち着いた数値が出れば、「利下げサイクル入り」への安心感が広がり、循環株やリスク資産への資金シフトが加速するでしょう。

先週8月22日(金)には、パウエル発言を契機にマーケットはリスクオンに傾きましたが、持続的な上昇には「データの裏付け」が不可欠です。今週はAI需要の強さとインフレ動向、この二大テーマが注目され今後の方向性がより確実のものとなるでしょう。