ある女性が大学の面接で「国民国家は衰退しているのか」と問われました。彼女は「国民国家が何を意味するのか分かりません」と正直に答えます。そこから面接官の助けを得て概念を理解し、少しずつ議論を深めた結果、見事に合格を勝ち取りました。

本来「分からない」と言うことは学びの入口ですが、多くの人は「信用を失うのでは」と恐れて口にしません。AIがそれらしい答えをすぐ返す時代であればなおさらでしょう。簡単な答えにすぐ行きついてしまいます。

公の場では自信ある態度が評価されます。メディア研修で教えられる「ABC技法」、 質問を認め(Acknowledge)、より安全な話題へ橋渡しをし(Bridge)、あらかじめ用意したメッセージを伝える(Communicate)、も、巧みに「知らない」と言わず切り抜ける方法ともなりえます。

これまでのAIは誤答を自信満々に言い切る傾向がありましたが、最新のChatGPT-5は、解けない問題に「優雅に失敗する」よう設計されています。誤答を自信満々に言うのではなく、不確実性をきちんと示すのです。より信頼できるでしょう。

「分かりません」と言うのは無力の証ではなく、成長と信頼の出発点です。心理学研究でも、知的謙虚さを持つ人ほど新しい知識を吸収しやすいとされています。知らないと認める姿勢は誠実さと好奇心を示し、学びと信頼を育むきっかけとなるでしょう。そのような機会を大切にしたいものです。