東証REIT指数、1年ぶりに1,800ポイント台回復

直近(5月23日~6月25日)のJ-REIT価格は、上昇基調で推移した。東証REIT指数は5月23日に1,714ポイントであったが、6月6日に1,750ポイント台を回復した。さらに6月24日には取引時間中ではあったが、2024年5月以来、ほぼ1年ぶりに1,800ポイント台まで上昇した。

市場動向に先行して価格が回復していた日本ビルファンド投資法人(8951)(以下NBF)は、6月19日に2022年以来、3年半ぶりとなる増資を公表し、武蔵小杉駅(神奈川県川崎市)徒歩2分の「フロンティア武蔵小杉N棟・S棟」を290億円で取得する。J-REIT市場では価格の低迷により増資が難しく、物件入替え(取得および売却)が中心であったが、外部成長(増資による物件取得)の動きが再開しつつある状況だ。1月の東海道リート投資法人(2989)、その4ヶ月後の5月に平和不動産リート投資法人(8966)が増資を公表している。

金利上昇懸念の解消が現在の価格上昇要因

J-REIT価格が今後も上昇基調を維持するためには、投資家が国内金利上昇の懸念を持たない状況が続くことが必要だろう。直近のJ-REIT価格上昇は、日本銀行(以下、日銀)が6月17日に公表した金融政策決定会合の内容が影響していると考えられるためだ。

日銀は短期金利である政策金利を当面0.5%に据え置き、2026年4月以降、2026年中は国債買入れ額の減額幅を半分とすることを公表した。政策金利据え置きの理由としては、米国をはじめとする各国の関税政策の影響が経済に与える影響が不透明である点を挙げている。この点を注視しているとすれば、政策金利の引き上げは2025年7月ではなく、少なくとも9月以降に先送りとなる可能性が高まっている。また、国債買入額の減額ペースを落とすことで長期金利の急上昇を回避する方針を示した。

J-REIT価格は米国長期金利動向との連動性が低くなり、さらにJ-REIT価格の下落要因のひとつにもなっていた国内金利上昇懸念が少なくなれば、さらに上昇する余地は充分にあると考えられる。東証REIT指数は、まだ1,800ポイント台を回復する動きではあるが、仮に1,950ポイントまで上昇しても分配金利回りは4.5%程度と高い水準であるためである。

利回りを支える分配金は増配基調が続く

【図表】予想分配金変動率上位3用途と直近1年の価格騰落率(※1)
(出所)東京証券取引所及び各銘柄公表資料を基にアイビー総研株式会社作成
※中央値ベース
※1:2025年5月末時点の1年前価格との騰落率
※2:二用途だけで取得額ベースの投資比率が90%を超える銘柄

利回りを支える分配金は、増配基調が続いている。図表は2025年5月末時点の各銘柄の予想分配金を1年前(2024年6月3日時点)と比較した変動率と価格騰落率を示している。好調な賃貸市況と高値が続く売買市況により、全銘柄の中央値は4.2%増配予想となっている。

特に直近1年(5月末基準)の増配率が大きいホテル系や物流系は、直近1年の価格下落率が大きいため価格上昇余地が大きいと考えられる。さらに、物流系銘柄は借入金比率が他用途と比較して低い銘柄が多く、金利上昇による収益悪化の影響は少ない。時価総額が大きい銘柄も多いため、物流系銘柄の価格が上昇すれば、東証REIT指数のさらなる上昇も期待できそうだ。