関税政策発表をきっかけに起こった4月の「米国売り」

5月21日のNY市場では米金利が大きく上昇し、日米金利差(米ドル優位・円劣位)は拡大したが、それを尻目に米ドル/円は一段安となった(図表参照)。米金利上昇にもかかわらず米ドルが下落に向かう「悪い金利上昇」が起こるところとなったわけだ。

【図表】米ドル/円と日米10年債利回り差(2025年1月~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

「悪い金利上昇」の最近の代表例は、4月初めの相互関税発表後の動きだった。「関税ショック」とされ世界的に株価が暴落する中で、本来なら「安全資産」として選好される可能性が高い米国債も大きく売られる異例の展開となり、米国債利回りは大きく上昇し、日米金利差は拡大に向かった。しかし、それを尻目に米ドル/円は急落となった。

この「関税ショック」の中での「悪い金利上昇」、米国株、米国債、米ドルの「トリプル安」はその後「米国売り」と呼ばれるところとなった。トランプ大統領の経済政策の「目玉」との位置付けの相互関税発表をきっかけに起こった「米国売り」。今回は、もう1つの「目玉」に位置付けられる減税法案が議会下院で審議されていることをきっかけに、「米国売り」第2幕に向かう可能性が出てきているのではないか。

今度は減税がきっかけで「米国売り」第2幕へ?

相互関税発表がきっかけとなった4月の「米国売り」局面で、米ドル/円は一時140円割れまで下落した。これに対してトランプ大統領は相互関税の一部の発動を90日間停止することを決め、さらに真っ向から対立していた中国についても一時的に大幅な関税率引き下げを決めることでかろうじて「米国売り」を鎮静化させた。

では、今度はもう1つの経済政策の「目玉」である減税についても、大幅な見直しに追い込まれるところまで「米国売り」が拡大することになるのか。139円で一段落した米ドル安・円高だったが、その再燃の可能性も「米国売り」がどこまで広がるかが大きな鍵を握ることになるのではないか。