トランプ関税政策の影響と対応
・4月2日にトランプ大統領が発表した対ベトナムの相互関税は46%と高率で、これを受けてベトナム株式市場は最大で約14%下落した。現在は90日間の発動猶予が発表されたことで、下落分の半分程度を取り戻している。
・ベトナムの対米輸出は全体の約3割を占め、対米貿易黒字は約1300億ドル(約19兆円)と大きい。主な輸出品は、2018年以降中国からサプライチェーンが移転してきた電子製品(iPhoneやスマホ、家電製品など)。

・ベトナム政府は対米関税を0%まで引き下げる用意があるなど積極的に歩み寄る姿勢を示している。米国が問題視する中国からの迂回輸出に関しても規制強化を表明。ボーイング機の購入やトランプファミリービジネスの誘致など様々な角度から対応し、最終的に46%の関税がそのまま実施される可能性は低いと考えられる。
ベトナムの経済成長とポテンシャル
・ベトナムは現在約30の国・地域と自由貿易協定(FTA)を締結しており、世界約30億人の市場に低い関税率でアクセス可能という強みがある。仮に米国を除いても25億人以上の市場に対して低関税率で輸出が可能。
・ベトナム政府は2025年に8%以上の経済成長を目指す野心的な方針を発表。大規模な財政支出でインフラ投資を加速させる方針で、高速道路、メトロ、発電など様々なプロジェクトが計画されている。また政府債務が相対的に少なく、財政支出を増やす余地が大きい。
・現地調査で確認された通り、ベトナムでは都市化が進行中で、地方から人が集まってきており、中間層が拡大している。高級ショッピングモールの増加や自動車の普及など消費のプレミアム化が進展している。
中間層拡大と経済発展段階
・ベトナムの1人当たりGDPは現在約4,300米ドルで、日本の1970年代前半の水準に相当する。一般的に1人当たりGDPが3,000米ドルを超えると可処分所得が増え、食料や生活必需品以外の消費が可能になる。
・今後ベトナムでは中間層人口が大幅に増える見通しで、2020年から2030年の10年間で人口の約1/4にあたる2300万人が中間層に加わると予測されている。都市化も急速に進み、人口ボーナス期と相まって不動産需要が引き続き高いと見られる。
・株式市場上位銘柄の変化を見ると、2012年には生活必需品セクターの企業が上位にランクインしていたが、現在は上位10銘柄に入っておらず、消費のプレミアム化・アップグレード化が進んでいることを示している。

ベトナムの主要企業と産業構造
・ベトナム株式市場では、グローバルに事業を展開する企業が増加している。特にFPT社は、ITサービスを提供するベトナム最大手企業で、海外売上が約半分を占め、日本にも3000人の社員を擁している。最近では住友商事とSBIホールディングスがAI開発向けデータセンター事業参入のためFPT社に投資することが発表された。
・VINグループはベトナム最大のコングロマリットで、日常生活に関わるあらゆる産業に進出。不動産事業(VINホームズ)では高級リゾートや人工湖を備えた大規模な住宅エリア開発を展開。新興EVメーカーVINファーストは2024年にトヨタを抑えてベトナム国内自動車販売で1位となり、EV充電インフラも積極的に整備。
・ベトナム株式市場の業種構成では、約半分を金融(特に銀行)セクターが占めている。銀行は高い経済成長を背景に個人の住宅・自動車ローンや企業の設備投資・運転資金の需要が旺盛で、相対的に高金利環境のため収益性も高い。
ベトナム株式市場の見通し
・ベトナム株式市場は2023年の景気回復と共に上昇傾向となり、2025年3月には約3年ぶりの高値を更新。過去の下落局面では、米中摩擦によるセンチメント悪化やベトナム国内の不動産市場規制強化が影響したが、現在は不動産市場への規制も一段落し、回復傾向にある。
・バリュエーションについては、トランプ関税政策の影響で業績予想が上下に変動する可能性はあるが、現時点では5年平均を下回る水準にあり、高値を掴むリスクは相対的に低いと考えられる。
・ベトナム株式市場は、現状MSCI指数やFTSE指数で「フロンティア市場」に分類されているが、早ければ2025年10月上旬にフッツィー(FTSE)がベトナムを「新興国」に格上げする可能性がある。格上げされれば外国人投資家が障壁なく投資できるようになり、資金流入が期待できるのではないか。
ベトナムの政治体制と投資環境
・ベトナムはベトナム共産党が唯一の合法政党だが、中国と異なり集団指導制が機能している。共産党書記長、首相、国家主席など4人体制で政治が運営され、5年ごとに党と政府の首脳が交代する。2024年に世代交代も順調に行われた。
・中国との大きな違いは、国会議員が国民による直接選挙で選ばれること、情報統制が緩やかで海外メディアへのアクセスが可能なこと(LINE、WhatsApp、Facebookなど中国では禁止されているサービスが利用可能)など、より開放的な体制となっている。
・政府は経済発展を最優先課題と位置づけており、トップダウンで経済を発展させる強い姿勢を示している。投資家にとって政治リスクは考慮すべき要素だが、現時点では政治の安定性が経済成長を後押しする要因となっている。
リスク要因
・目先のリスク要因は米国の関税政策であり、ベトナムと米国政府の貿易交渉の進展次第で株価が変動する可能性がある。実施された場合のGDPへの影響は最大2~3%程度と見られるが、政府の財政支出拡大による下支えで6%程度の成長率は維持できると考えられる。
・間接的な影響として、米国の景気後退や高インフレへの懸念が強まると世界的な株価下落が深まる可能性があり、ベトナム株も外部環境の悪化の影響を受けやすい。
・ベトナム通貨(ドン)は対米ドルで変動管理相場制であり、上下5%以内に政府がコントロールしているが、外部環境が急速に悪化し外国人投資家が資金を引き上げる場合はドン安が進む可能性もある。基本的にドン対円の為替は、ドル円相場でほぼ決まる。
ベトナム株式市場の規模
・ベトナム株式市場の規模は現在約35~40兆円程度で、インドと比較すると約5%の規模にとどまるが、経済成長とともに株式市場の時価総額も拡大すると予想される。
・外国人投資家の投資規制は依然として存在するが、徐々に緩和される方針。現在の株式市場の約4割が外国人投資家に開放されており、そのうち約6割の枠がまだ空いているため、今後約10兆円程度の投資余地があるだろう。
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