2025年5月9日(金)8:30発表
日本 毎月勤労統計調査2025年3月分速報
【1】結果:3月の実質賃金はマイナス幅を拡大し、3ヶ月連続でのマイナス推移に

2025年3月の名目賃金は、前年同月比2.1%増と前月2月(改定値)から伸びが減速する結果となりました。市場予想も下回り、若干のペースダウンがうかがえる内容です。基本給にあたる所定内給与は、同1.3%増と前月(改定値)から横ばいとなりました。サンプル替えの影響を除いた共通事業所ベースの所定内給与は、0.1ポイント伸びが減速し、右肩上がりであったベース賃金も減速感が見られる状況となっています。

3月の実質賃金は、前年同月比2.1%減と3ヶ月連続でマイナスでの推移となりました。今回の発表から、ヘッドラインのCPI(消費者物価指数総合)にてデフレートされた実質賃金も発表され、同指標は前年同月比1.5%減となっています。従来の算出に用いられる消費者物価指数(持ち家の帰属家賃を除く総合指数)と比較すると、ヘッドラインの消費者物価指数は伸びが低く推移しており、その分実質賃金は高くなるものとされています。
【2】内容・注目点:伸び悩みが見られるも春闘の動向が支え

3月の所定内給与は前月から横ばいとなり、図表3にあるように一時期よりも伸びの鈍化が続いていることがわかります。物価も高値圏で留まっての推移であることから、実質化した所定内給与もマイナス3%に近い値で推移しています。一般的に、3月の給与は前月2月に働いた分が給与として支払われますが、一部には閏年等の影響で2月の営業日が2024年よりも少なかったことによって、賃上げ率が伸び悩んだと考えられます。

もっとも、現時点での春闘の動向からは2024年以上の賃上げ率が達成される公算が高く、この影響が少しずつ指標に反映されるものと考えられます。次回の発表から夏ごろにかけて、本指標が持ち直していくか注目です。
【3】所感:2026年も同程度の賃上げ率が達成されるかは懐疑的
2025年の春闘は、前年と同様に高い伸びが達成されつつあるものの、2026年においては同水準の賃上げが達成できるかと言われれば、現時点では可能性が低いのではと考えられます。1つには、米国による関税政策の影響が企業業績を下押し、賃上げの原資が縮小する可能性があるためです。
また、日銀も含め、今年度から来年度の物価見通しは、原油市場の下落傾向等から、以前の予想よりも緩やかに鈍化していく見通しが大半となっています。物価上昇に沿った、賃上げが実施されてきた背景を考えると、見通しの通り物価が落ち着いた際には、賃上げ率も低下していくものと推察されるでしょう。
マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 山口 慧太