日経新聞によると、パリ証券取引所が近々高級ワインの先物を上場させるそうです。これは一般的な話題として耳目を引くであろう以外に、なかなかおもしろいことが今後起こるかも知れません。そもそも先物は天候の変化などによって生産高が変わる農作物の生産者に経済的なヘッジの手段を与えるために考案されたものですから、そういった意味ではごく自然なことです。ただし、通常は生産量の多い一次産品に対して先物はあります。ワインはブドウという一次産品に対して、杜氏の手が施されています。しかも高級ワインというと生産量もそれほどは多くないでしょう。恐らく先物の最終的な決済は、ワインの現物によって行われるのだと思いますが、そうすると例えば予め先物を売っておいて、製造過程の最終段階でわざと味を落としてしまうとか、或いは先物を買っておいて、あとで樽を壊してしまうとか(これはあの007シリーズのゴールド・フィンガーのアイデアと一緒です)、或いは実際にこのような悪いことをする人はいなくても、味にぶれが出て値段が変わるといろいろな憶測が飛んだりとか、少なくとも推理小説の1つぐらいは出てきそうです。今から楽しみですね。
- 松本 大
- マネックスグループ株式会社 取締役会議長 、マネックス証券 ファウンダー
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ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社を経て、ゴールドマン・サックス証券会社に勤務。1994年、30歳で当時同社最年少ゼネラル・パートナー(共同経営者)に就任。1999年、ソニー株式会社との共同出資で株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)を設立。2004年にはマネックス・ビーンズ・ホールディングス株式会社(現マネックスグループ株式会社)を設立し、以来2023年6月までCEOを務め、その後代表執行役会長。2025年4月より会長(現任)。東京証券取引所の社外取締役を5年間務め、政府のガバナンス改革会議等に参加し、日本の資本市場の改善・改革に積極的に取り組んで来た。ヒューマン・ライツ・ウォッチの副会長を務め、現在は米国マスターカード・インコーポレイテッドの社外取締役。東京大学法学部卒業。