2025年1月9日(木)8:30発表
日本 毎月勤労統計調査2024年11月速報
【1】結果:賃金は堅調も物価上昇がそれを上回る状況が続く

2024年11月の名目賃金は、前年同月比3.0%増と前月から伸びが加速となりました。市場予想も0.3ポイント上回り、名目ベースでは賃金の伸びが継続していることがうかがえます。残業分を除いた基本給にあたる所定内給与は、共通事業所ベースを含め2%台後半で、2024年は堅調さを維持し推移しています。

一方で、実質賃金は前回10月のデータもマイナスに修正され、今回含め4ヶ月連続で前年同月比マイナスの推移となっています。算定に用いられる消費者物価指数(持家の帰属家賃除く総合指数)は、前年同月比で3.4%上昇し、前月からはプラス0.8ポイントと、下落基調が続いていた中で反転となりました(図表2灰色)。11月は食料等の変動性の高い品目における物価上昇が目立ち、指数を押し上げたことが実質賃金にもマイナスに寄与しました。
【2】内容・注目点:実質所定内給与のプラス推移にはまだ距離があるか
賃上げ機運も相まって、所定内給与は右肩上がりで推移していることが確認できます。ここ5年でみても、前年同月比2%台後半の上昇は高水準であり、名目ベースではしっかりとしたベース賃金の上昇が見受けられます(公表される所定内給与は名目ベース)。
一方で、所定内給与を物価で割り引いて実質化すると、公表される実質賃金と同様に、2024年は総じて前年同月比マイナスで推移していることがわかります。堅調に上昇しているとはいえ、物価対比で見れば依然として弱さがある状況で、家計のマインド改善や賃金上昇から消費への好循環への道のりは、まだ距離があるとも推察できます。

【3】所感:次回のデータでもインフレ圧力は大きいと考えられる
足元では、再びコストプッシュインフレの様相が見え始めており、変動性の高い品目を含んだ総合指数はここ数ヶ月でジャンプしている様子がうかがえます。
図表4は2024年12月の東京都区部消費者物価指数(東京CPI)の推移ですが、ヘッドラインである総合指数は前年同月比3.0%上昇、生鮮食品を除いたコア指数は同2.4%上昇と、その差から生鮮食品の上昇寄与が大きいことが推察されます。
東京CPIは全国CPIの先行性があり、12月の物価上昇は伸びの加速が予想され、実質賃金へのマイナス圧力は続くでしょう。一方で、12月はボーナスの影響により特別な給与の上昇が見込まれ、実質賃金のプラス転換の可能性は高いものの、一時的なものにとどまると考えられます。基調の観点では、所定内給与がすう勢を維持し、足元のコストプッシュインフレが落ち着いていくことがベストケースと考えられます。

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 山口 慧太