その波は徐々に大きなうねりになりました。

今年2月、米国の銀行業界は、「公平な貸出原則」と呼ばれる規制の強化案について、地方裁判所に提訴しました。また、今年9月には、昨年当局が提示した資本強化案に猛反対し、柔軟化を勝ち取りました。そして昨日は、米大手銀行に毎年課されている「ストレステスト」について、無駄な費用の温床となっているとして、見直しを訴える動きも報じられています。

実は、今年6月には、「シェブロン法理」と呼ばれる法律解釈の原則が覆されました。この法理は、1984年に石油大手シェブロン社が絡む訴訟で、法律のあいまいな部分は政府当局の解釈に従うというものでしたが、最高裁が40年ぶりにこれを否定しました。特に、規制当局の権限が拡大してきた金融分野に恩恵が大きいという憶測が広がりました。

そこに登場したのが、銀行規制に懐疑的とされる第二次トランプ政権です。イーロン・マスク氏が率いるDOGE(政府効率化省)も、FRBとOCC、FDICという3つの銀行規制当局を整理する方向であると報じられています。銀行にとってはまさに渡りに船。現在、銀行業界は、おびただしい数の規制緩和要望を準備していると報じられています。

1988年に初めて国際的な銀行規制であるバーゼル規制が適用されて以来、銀行規制はほぼ強化一辺倒でした。特に金融機関の行き過ぎが原因とされるリーマンショック以降は、貸出リスクからトレーディング、オペレーションに至るまで、ありとあらゆる業務が規制強化の対象となるという、受難の時代となりました。

しかし、来年は、それでなくても過去最高の利益を叩き出す米銀にさらなるパワーを授ける年になるかもしれません。長年銀行業界を見てきましたが、銀行業界の当局に対するこんな勢い動きは見たことがないと思います。

私の「つぶやき」は年内最後となりますが、明るく締めくくれるトピックがあってよかったと思います!

来年もよろしくお願いします。