年末は米ドル安・円高になる傾向
2022年、2023年は11月、12月と2ヶ月続けて円高になった。2024年も11月は円高になった。では、3年連続で12月も円高になるのだろうか。
米ドル/円のチャートを見ると、トランプ氏が大統領選に勝利し、156円まで米ドル高・円安になった。160円までまっすぐ米ドル高になるという見方も多かったが、その後は一時148円まで米ドルは反落した。
米ドル/円に日米10年債利回り差のグラフを重ねると、8月頃から数ヶ月、かなり高い相関関係が続いていることがわかる。日米長期金利差が縮小したので、米ドル/円も反落した。日本の長期金利は多少上がったもののそれほどではない。主因は米国の金利が大幅に下がっていることである。
トランプ氏が大統領選で勝利した場合、米金利の上昇が予想されていた。なぜなら、トランプ氏の経済政策は大型減税、関税引き上げ、反・気候変動、反・不法移民とインフレ、米金利上昇リスクがあるものばかりであるからだ。ところが現状では、米金利は低下している。この米金利低下・米ドル安は一時的なものにすぎないのか、そうではないのか。これが今の為替を見る上で重要なポイントになる。
2024年7月からの米国の10年債利回りを見ると、下落しているのがわかる。米大統領選で、トランプ氏の勝利が確定した後、4.5%にかかるところはあったが、そこで一段落すると大きく下がり、先週末の雇用統計発表を受けて、一時は4.1%割れ近くまで下がった。
きっかけの一つとしてはベッセント効果があるだろう。次期財務長官にウォール街出身のベッセント氏が指名されたことにより、トランプ氏の財務赤字拡大に対して防波堤になるのではと思われた。その日は4.2%まで下がったが、それだけではこの金利低下を説明できない。
そもそも、その前に金利は上昇していた。2ヶ月で1%近くも上昇していた金利がそこからさらに上がるのは難しい。ベッセント氏はあくまでもきっかけに過ぎず、2ヶ月かけて上がった分の調整が入り下がったのだろう。
年末は金利が下がる傾向
もう一つ重要な点として、2022年からの米国10年債利回りの推移を見ると、毎年年末にかけて金利は下がっている。2022年のピークは10月下旬で、11月に入り2番天井をつけるとそこからはずっと下がった。12月の半ばに一巡し、年末にかけては上がったが、これは日銀の影響によるものだった。2022年12月20日頃、黒田日銀総裁が、イールドカーブ・コントロールの上限を緩和して、0.25%から0.5%にすると発表し、日本の金利は急騰。先進国の金利は連動するため、アメリカの長期金利も影響を受けて、年末にかけて上昇した。2023年は9月に5%をつけてからは徐々に低下し11月以降は急激に下がった。
このように年末にかけて米金利は下がる傾向ある。にもかかわらず、今回はトランプ氏勝利ばかりに注目し、いつもなら金利が下がるタイミングで上がると予想した人が多かった。
売られ過ぎからの買戻しによる調整
CFTC統計の投機筋の10年債ポジションを見ると、売り越しが激増している。2022年から歴史的インフレが始まり、その状態が続いた。インフレは沈静化したものの、金利上昇リスクは2021年以前とは比べ物にならないほど広がった。金利上昇リスクを警戒した債権の売り越しもそれまでのスケールから急拡大し、10年債は売られ過ぎていた。その反動として、年末にかけて買い戻され、債券価格が上がり、逆数である金利は下がった。
ここ数年、年末にかけて米金利が低下しやすい状況の裏には、インフレ傾向が続く中で債権が売られ過ぎている状況から調整が入り、買い戻しされることで金利が下がるという傾向があるのではないか。
2024年は2022年、2023年以上に債券の売り越しが増えている。おそらくここにトランプリスクがあったのだろう。例年以上に売れすぎているため買い戻したいが、トランプ氏が勝利すればやはり金利は上がるだろうから、買い戻すべきかどうかと思った人が多かった。トランプ氏が勝利しても金利は上がらないと確認したことで、買戻しが入っているのではないか。その見方が正しければ、これから結構金利は下がるのではないか。
過去2年、米ドル安になった主因は、大きくなり過ぎた米ドル買いポジション調整が入り、縮小したからだろう。その要因は今回終わったと思われる。
3年連続で12月に円高になるかどうかのカギは、米金利の低下が続くかどうかではないか。