10月4日の米雇用統計発表時に米ドル買い・円売りが進んだ理由

・米ドル/円は9月に一時140円割れとなるが、先週10月4日に発表された米9月雇用統計が予想より強かったこともあり、一時149円台まで米ドル高・円安まで戻し、9月の米ドル/円の最高値147円台を超えた。

・米ドル/円と日米の10年債利回り差を重ねてみると、10年債利回り差の拡大と重なるように150円近くまで戻したことがわかる。その主因は10月4日に発表された米雇用統計の結果によるものである。

・FFレートと米失業率を比較すると、両者の相関性が高いことがわかる(例外的に、ゼロ金利時代は失業率が悪化してもそれ以上金利を下げられないため相関性は下がる)。この相関から大幅な失業率の悪化によって、9月FOMC(米連邦公開市場委員会)での0.5%という大幅利下げが示唆されていた。一方では景気回復や株最高値更新といった好材料があったにもかかわらず、失業率の悪化により米利下げが行われた。

・雇用統計で発表された9月の失業率は、事前予想4.2%のところが4.1%と改善。これはつまり、次回FOMCでの利下げ見送りを示唆している。そのため米ドル買い・円売りが進む結果となった。

どこまで米ドル高・円安まで戻るのか

52週MAの関係から今後の米ドル/円を予想

・7月の161円から、9月の139円まで米ドル/円が急落する中で、52週MAを大きく割ることになった。これは一時的なものではなく、ドル安・円高トレンドに転換した可能性が高い。

・このトレンドと逆行する一時的な米ドル高・円安はどの程度見込めるか。2007~2011年に展開した過去の米ドル/円の下落トレンドを見ると、トレンドと逆行する一時的な上昇時は52週MAを2%ほど上回っていた。また、今回のトレンドは逆の2024年7月まで続いた米ドル/円の上昇トレンドの中で、一時的に米ドルが下落した2023年3月は52週MAを3%ほど下回っていた。このように多少のダマシはあり、一時的な動きも52週MAをプラスマイナス2~3%はブレークする。現在、52週MAは150.5円くらいである。この数字を2~3%上回るとすると、153円~155円は一時的上昇の範囲内としてありえるのではないか。

金利差と120日MAから考える、重要分岐点とは

・違うアプローチとして金利差で考えてみる。150円まで米ドル・円が上昇するには10年債利回り差が3.15%以上拡大する必要がある。152円なら3.25%程度拡大する必要がある。この金利差は、米国の金利から日本の金利を引いたものであるため、米国の金利だけでいうと、前者で4.1%、後者で4.3%となる。現在、米国の10年債利回りは4%を少し超えて4.02%程度。利上げの見通しはまったくない中、金利の上昇は限られる。4.1%まではありえるが、4.3%までは厳しいのではないか。152円に届くのは微妙ではないか。

・米ドル/円と120日MAを比較すると、ヘッジファンドの売買転換点とある程度一致している。現在、足元で152.2円。ヘッジファンドはこれを下回るとドル売り、上回るとドル買いに転換するということが、これまでの傾向として確認される。金利差に従い、152円まで届かなければ今の米ドル売り・円買いの傾向は変わらないだろう。一方、152円を超えてきたら、米ドル買い・円売りに転換するだろう。ここが重要分岐点となるが、今回はこれを超えずに終わるのではと思っている。