ようやく上昇基調が鮮明となり、日経平均が久々に4万円回復を目前にしたところで「石破ショック」が起こりました。これから、という気持ちであった方にはまさに冷や水を浴びせられたというところでしょう。しかし、そうしたショックもまた相場の醍醐味の一つでもあります。そして、資本市場の発するシグナルに対し、実体経済は徐々に適合していくものでもあるのです。程なく、衆議院の総選挙も予定されています。過去の経験則によれば「選挙は買い」です。あつものに懲りてなますを吹くことのないよう、こうした時こそ冷静に対処したいところです。

石破新政権が発足、衆院解散、総選挙へ

さて、今回はその石破ショックをもたらした「石破新政権」を取り上げてみましょう。9月27日に石破茂氏が自民党新総裁に選出され、10月1日には首班指名を受け、第102代、65人目の内閣総理大臣に就任しました。既に組閣も終え、それに先立つ記者会見では10月9日に衆院解散、27日に総選挙を実施するという意向も明らかにされました。この解散総選挙は石破内閣の信任選挙という形となり、氏の政策や政治運営手法などを世に問うものになると予想します。当然、これらは日本の経済情勢にも大きく影響します。株式市場においても、11月の米大統領選とも相まって、当面は政治情勢に反応する展開が続くものと考えます。

手厳しい市場のファーストリアクション、今後の政権運営に注目

石破首相の自民党新総裁選出に対する株式市場のファーストリアクションは実に手厳しいものでした。9月27日の為替市場では石破氏選出の報が出た瞬間、一気に3円/ドルも円高が進行し、総裁選後の9月30日の株式市場は日経平均で1,900円を超える急落を演じました。所謂「石破ショック」ですが、これを見る限り、資本市場は石破氏の登場をネガティブに捉えており、氏の緊縮財政的なスタンスに加え、これまでに言及されてきた金融所得課税強化や法人税引上げなどの構想が嫌気されたということなのだと推察します。

また、高市早苗氏との決戦投票が僅差勝利となったため、今後の党運営にもしこりが残るものとなったのでは、という危惧も否めません。総選挙時には話題となっている政治資金規正法未記載議員をどう取扱うのかという党運営に対する先行不透明感もあるでしょう。

ただし、実際の政治ではあまり過激なことには相当の軋轢が発生します。金融所得課税強化は、岸田前首相も総裁選では言及していたものの、その後は反発も多く主張を断念したという例もあります。資本市場の懸念は既に株価や為替などで周知されていると言えるでしょう。今後は石破新政権が、これらの資本市場からの懸念や危惧に対して、どのような回答をしていくのか、しっかり注目していきたいところです。

防災、円高、地方創生…石破政権の経済運営でメリットが期待できる銘柄

まだ海のモノとも山のモノともわからない状況ですが、株式市場は石破首相の経済運営でどのような業種・企業にメリットが期待できるでしょうか。

まず言えるのは、防災関連です。石破氏は自民党総裁選においても防災庁の発足を提言していました。実際近年、大規模な台風、大雨、洪水、地震などが頻発しており、事前対策、事後対応を一括で管理してノウハウを集積し、災害の影響抑制を図る組織の設置は、かなり理に適ったもののように思えます。特に2024年1月1日に大地震・津波の被害を受けた能登半島では復旧が大幅に遅れる中で大雨被害が発生するなど、政府の対応への不信感も募っていたところでした。我々の生活を守るという観点で防災関連には是非期待したいところです。

そうした観点からすれば、以下のような銘柄群がリストアップできるのではないでしょうか。地盤改良などの特殊土木企業やインフラ補修工事、産業資材に関連するショーボンドホールディングス(1414)、ライト工業(1926)、前田工繊(7821)といった企業群に加え、電線地中化関連では関電工(1942)、きんでん(1944)、中電工(1941)、エクシオグループ(1951)、コムシスホールディングス(1721)などです。さらに、建機レンタルでは、ニシオホールディングス(9699)、カナモト(9678)、ワキタ(8125)などが挙げられるでしょう。これらは以前に「命を守る企業を読み解く」のコラムでも採り上げた銘柄です。

また、金利に対して「タカ派」とされる政治スタンスからは、金利上昇メリット銘柄、円高メリット銘柄が挙げられるかもしれません。前者は当然銀行業がその筆頭であり、後者は外食、食品、小売、航空、製紙などがその代表となります。

東証プライム上場で時価総額が5,000億円を超えている銘柄群で言えば、日清製粉グループ本社(2002)、ビール3社―サッポロホールディングス(2501)、アサヒグループホールディングス(2502)、キリンホールディングス(2503)、エービーシー・マート(2670)、ニチレイ(2871)、王子ホールディングス(3861)、日本航空(9201)、ANAホールディングス(9202)、ニトリホールディングス(9843)などが挙げられるでしょう。

そして、石破氏といえば地方創生です。地方創生関連では、時価総額が5,000億円未満となりますが、事業承継などの日本M&Aセンターホールディングス(2127)やストライク(6196)、スマート農業領域のクボタ(6326)などが注目銘柄と言えるのではないでしょうか。