回復基調に入ったと思われた株式市場ですが、9月に入って腰折れ状態となってしまいました。直近の安値にはまだ遠いため「底割れ」という感はないものの、失速感の漂う展開といった印象です。

以前のコラムでは日銀の再利上げが業績相場への転換点になるかもしれないと指摘しましたが、先行不透明感の増した日米政治状況、衰えない中国からの安価輸出など、実際は依然としてマクロ要因に振り回される状態が続いていると言えるでしょう。これらはまだ決着が着く段階にない(決着への道筋が見えない)ことを考えれば、もうしばらくはマクロ環境に一喜一憂する神経質な展開が続くのかもしれません。

古来、こういう時はじだばたせず、しばらく模様眺めに徹するという選択もまた合理的とされてきました。つまり、「休むも相場」です。昨今の「どったんばったんした相場」にお疲れの方は、割り切って、いったん「休み」とするのも一手としてお考えになってみてください。

iPhone16はAI活用を想定した設計に

さて、今回は「iPhone16」を採り上げてみましょう。先週、発売近しとの観測が高まっていたiPhone16の詳細が正式に発表されました。日本では予約の受付が開始され、来週にも発売となる見通しです。日本のスマートフォン市場では圧倒的なシェアを持つとされるiPhoneですので、新機種の発売を心待ちしている方も少なくないのではと想像します。

すでに明らかになった内容では、iPhone16では(15シリーズに比べて)価格が据置きとなり、生成AI機能も装備される模様です。生成AI機能の利用開始は2025年以降となるようですが、今以上にAIの駆使・活用を想定した設計になっているということなのでしょう。iPhone16はAIがさらに我々の生活に浸透してくるきっかけになるのかもしれません。

株式投資という視点においても、iPhoneの新作は注目されます。これは、iPhoneの中身には日本企業の提供する電子部品が多く使用されており、かつては「日本企業なくしてiPhoneは生産できない。iPhoneの成長は日本企業が支えている」と認識されていたからに他なりません。アップルのサプライヤーリストに名前の載った日本企業は、言わば、日本におけるアップル[AAPL]株互換銘柄のように位置づけられていたのです。

日本製部品のシェアはかつてより低下

ただし、その認識は今や実態とやや乖離があります。前段を過去形で表現したのはそのためです。例えば、日本経済新聞の報道によると、現時点での最高機種iPhone15ProMaxの部品原価における日本製部品のシェアはおよそ10%に過ぎません。しかも、iPhone12では13%、それ以前の機種ではもっと高い比率であったという分析と比較すると、その影響力が低下してきているという傾向は否めません。

これは、iPhoneの価格上昇が急ピッチなものとなる中、コスト重視で部品を採用するケースが増えたためともいわれています。日本製品は世界最先端ではあるものの、だからといってやたらハイスペックな部品を採用すると、製品価格の上昇に歯止めがかからなくなってしまいます。日本製から廉価製品へのシフトが進んだというわけです。

しかも、世界のスマートフォン出荷台数は2017年の15.6億台をピークに減少基調に転じ、2023年には11.3億台まで落ち込んでいます。市場全体の縮小、さらに部品搭載比率の低下というダブルパンチに日本の部品メーカーは直面していたのです。どうもiPhoneの日本依存やスマホ市場の成長を前提とした単純な銘柄選択にはリスクが増してきているように考えられるのです。

iPhone搭載製品は最先端テクノロジーと量産性の両方を満たした電子部品の見本市

しかし、見方を変えると、iPhone最新機種に搭載されるということは、廉価製品に置換えができないほど「圧倒的な品質や競争力を有している」とも言えます。そもそも新機種のiPhoneは、最先端テクノロジーと量産性という両立の難しい特性を同時に満足できる電子部品の見本市みたいなものです。確かにiPhone搭載部品の量的成長期待はかつてほどではないとしても、iPhone以外の領域拡大に向けて強力な実績を積むことができるというメリットは膨大なものがあると推察します。

iPhone関連銘柄としては、出荷数量といった近い将来を見越した選択よりも、よりロングタームで先端企業としてのポテンシャル拡大に注目することが重要と考えます。

これまでの実績から推測するiPhone関連銘柄

では、具体的にどのような企業がその対象として浮上してくるでしょうか。

iPhone16に部品が搭載されている企業の分析はこれからとなりますが、これまでの実績などから想像すると、MLCC(積層セラミックコンデンサ)領域では世界シェアトップの村田製作所(6981)を筆頭に、太陽誘電(6976)、TDK(6762)などの企業群が、カメラ関連ではやはり世界有数のCMOSイメージセンサーメーカーであるソニーグループ(6758)が注目株ということになるでしょう。

上記以外でも、アップル社の2023年版サプライヤーリストには、AGC(5201)、アルプスアルパイン(6770)、デクセリアルズ(4980)、フジクラ(5803)、ヒロセ電機(6806)、日本航空電子工業(6807)、JDI(ジャパンディスプレイ)(6740)、ENEOSホールディングス(5020)、恵和(4251)、キオクシアHD、京セラ(6971)、ミネベアミツミ(6479)、NISSHA(7915)、日東電工(6988)、NOK(7240)、ルネサスエレクトロニクス(6723)、ローム(6963)、シャープ(6753)、住友化学(4005)、住友電気工業(5802)などの企業が掲載されています。

iPhone16を経て、2024年版のサプライヤーリストに新たな企業があるのかを含め、どのような企業の名前が出てくるのかも注目したいところです。