日本の暗号資産投資は、海外と比較して盛り上がりを欠いている。日本暗号資産取引業協会(JVCEA)の統計データによれば、2024年3月にビットコインの価格が1,000万円を突破した際の月次取引高は、2021年のピーク時の半分以下の規模に留まっている。価格が当時より高騰しているにもかかわらず、取引高が減少しているということは、ビットコインの取引量でみればさらに落ち込んでいるということだ。
この現象の背後にはいくつかの要因が考えられる。まず、日経平均株価が史上最高値を更新する中で、日本の投資家が高いリスクを取ってまで暗号資産に投資する必要性を感じていないことが大きい。2024年に新NISA制度がスタートしたことも日本株への投資意欲を後押ししており、税制面でも日本株が有利な状況にある。
また、日本では信託法などの問題でビットコインの現物ETFに投資することができない点も、投資家による暗号資産市場への参入が進まない要因の一つだ。米国や香港、英国などでは現物ETFが承認され、機関投資家を含む幅広い投資家の資金がビットコインに流入しているが、日本はその波に乗れていない。
一方で、暗号資産およびWeb3関連事業者の熱は全く冷めていない。2024年8月に東京で開催された国内最大級の業界イベント「WebX」には、国内外から1万人を超える参加者が集まった。私自身も現地に足を運んだが、デジタル資産に対する期待感や、未来を共に創り上げようとする前向きなエネルギーを肌で感じることができた。
イベントでは、ソニーが独自開発したレイヤー2ブロックチェーン「Soneium」の構想が再度紹介されたり、日本におけるビットコイン現物ETFの実現可能性や、暗号資産に関する税制改革についても建設的な議論が交わされた。岸田首相や小池都知事、吉村府知事からはビデオレターが寄せられ、来年には同イベントが大阪万博の時期と合わせて大阪でも開催されることが発表された。
このように日本の暗号資産市場は停滞しているが、暗号資産およびWeb3関連事業者は業界発展のために前進を続けている。こうした活動が持続することで、日本でも、暗号資産が国民の資産運用を助ける金融資産の一つとして認められ、ビットコインなどへの投資熱が復活する日が訪れるかもしれない。