モトリーフール米国本社、2024年8月6日 投稿記事より
デジタルオーシャン[DOCN]は中小企業に手頃な価格のAI用クラウド・インフラを提供
マイクロソフト[MSFT]、アマゾン・ドットコム[AMZN]、アルファベット[GOOGL]は急成長するクラウド・コンピューティング業界のトップ3企業です。これらの企業は、単純なデータストレージから複雑なソフトウェア開発ツールまで、何百ものクラウドサービスを企業に提供しています。さらに最近では、エヌビディア[NVDA]などによる高性能GPU(画像処理装置)を備えた新しいデータセンターに多額の投資を行い、AI開発企業の演算処理能力を支えています。これは、クラウド業界にとって、歴史上最も価値のある事業機会の1つとなる可能性があります。
マイクロソフト、アマゾン・ドットコム、アルファベットは、AIの市場シェアをめぐって熾烈な争いを繰り広げています。一方、デジタルオーシャン[DOCN]は、これら同業他社が見落としがちな中小企業を専門にサービスを提供することで、収益性の高いニッチ分野を開拓しました。デジタルオーシャンの株価にはかなり割安感があると考えられますが、今後、投資妙味があるでしょうか。
AIインフラへのアクセスを民主化
クラウド業界のトップ企業は通常、莫大な予算をもつ大企業へのサービス提供を重視し、中小企業にはあまり関心を示しません。しかしデジタルオーシャンがターゲットとするのは中小企業のみで、たとえばスタートアップ企業や従業員500人以下の企業などが含まれます。
デジタルオーシャンは、顧客の多くが社内にテクニカルチームをもつ余裕がないことを知っているため、そうした顧客に高度にパーソナライズ化されたサービス、明確で透明性の高い価格設定、導入が簡単なクラウドツールを提供しています。
同社は現在、その詳細な計画に基づき、手頃な価格のAIソリューションを顧客に提供しています。現在、クラウド業界のトップ企業の顧客である大企業は、数万GPU相当の演算処理能力にアクセスできます。つまり、最先端のAIモデルを構築できるのは、大きな資金力をもつ開発企業だということです。中小企業には絶対に太刀打ちできません。
デジタルオーシャンは先ごろ、エヌビディア[NVDA]のフラッグシップモデルであるH100を含む少数のAI用GPU(通常は1~8個)に顧客がアクセスできるようにし、顧客に適した規模でAIをワークフローに統合できるようにすると発表しました。CEOのパディ・スリニヴァサン氏は、このように少数のGPUへのオンデマンド・アクセスは業界初であり、AIへのアクセスの民主化に役立つと述べています。
同社はまた、2025年初めにアトランタに最先端のデータセンターを開設し、AI用演算処理能力を拡充する予定です。同社は2023年、AIデータセンター・インフラの専門会社としてサービスを手頃な価格で提供しているペーパースペースを買収し、キャパシティを強化しましたが、データセンターの新設によりキャパシティはさらに増強されます。
実際、ペーパースペースは、AI用演算処理能力に関しては、無駄を省くために秒単位の課金を提供しているため、マイクロソフトのアジュールのようなクラウド分野を主導するサービスに比べて最大70%価格を抑えており、また顧客を契約で縛ることはしていません。その上、提供するサービスの範囲が絞られているため、無駄のないコスト構造となっており、その節約分を顧客に還元しています。
デジタルオーシャンの増収率は加速
デジタルオーシャンの2024年第2四半期(4~6月期)売上高は過去最高の1億9,250万ドルと、前年同期比で13%増加しました。増収率は、2四半期連続での上昇となりました。
同社はわずか2年前には、毎四半期30%超の増収率を記録していました。よって全般的には大幅な減速となりました。その一因は、収益性を高めるために現在進めているコスト削減です。第2四半期の営業費用は合計9,500万ドルと、前年同期比で8.5%減少しました。その結果、純利益は1,910万ドルと、2,777%もの驚異的な伸びとなりました。デジタルオーシャンがコストを削減しつつ売上げを伸ばし、順調に利益を出しているという事実は、同社のクラウドサービスに対して需要があることを証明するものです。
加えて、今後数四半期にわたり投資家が注目すべき点があります。デジタルオーシャンによると、特にAI関連の売上高は、第2四半期に前年同期比で200%と急増しました。同社はAIサービス(ペーパースペースを含む)による売上高を具体的には公表していないため、比較対象となる前年の数値が非常に低かった可能性も考えられますが、それでも需要が急増していることが分かります。
デジタルオーシャン株に投資妙味がある理由
グランドビューリサーチの推計によると、クラウド業界全体の市場規模は今年、約7,300億ドルになる見込みです。デジタルオーシャンによると、中小企業セグメント単独では1,140億ドル相当の市場規模をもつ可能性もありますが、同社は、同セグメントの今後の年間成長率が23%になるのに対して、クラウド業界全体の成長率は21.1%にとどまると予想しています。
手頃な価格のAIインフラとサービスを提供するデジタルオーシャンの戦略は、他の企業がまだ十分なサービスを提供していない新たな市場を切り開くものであり、その事業機会に新たな側面をもたらす可能性があります。世界的なコンサルティング会社PwCは、AIは2030年までに世界経済の規模を15兆7,000億ドル増やすと考えており、デジタルオーシャンにとって過去最大の事業機会となることは間違いありません
デジタルオーシャンの株価は現在、2021年のハイテク株ブームの最中につけた史上最高値を75%下回る水準で取引されています。当時の株価売上高倍率(PSR)は約30倍と割高でしたが、それ以降同社は売上高を大幅に伸ばし、現在PSRはわずか4.1倍となっています。これは、同社が上場した2021年の平均PSRである8.8倍に対して50%以上のディスカウント水準です。
これらのことから、デジタルオーシャン株は現在かなり割安だということが分かります。それに加えて、同社の増収率は加速し、収益性は大幅に上昇しています。今後もクラウドおよびAI業界には巨大な事業機会があると考えられます。
免責事項と開示事項 記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。アマゾン・ドットコムの子会社であるホールフーズ・マーケット元CEOのJohn Mackeyは、モトリーフール米国本社の取締役会メンバーです。アルファベットの幹部であるSuzanne Freyは、モトリーフール米国本社の取締役会メンバーです。元記事の筆者Anthony Di Pizioは、記載されているどの企業の株式も保有していません。モトリーフール米国本社は、アルファベット、アマゾン・ドットコム、デジタルオーシャン、マイクロソフト、エヌビディアの株式を保有し、推奨しています。モトリーフール米国本社は以下のオプションを推奨しています。マイクロソフトの2026年1月満期の395ドルコールのロング、同2026年1月満期の405ドルコールのショート。モトリーフール米国本社は情報開示方針を定めています。