2024年8月6日(火)8:30発表
日本 毎月勤労統計2024年6月
【1】結果:春闘、ボーナスの結果をうけて高水準の賃金上昇
2024年6月の名目賃金・実質賃金は、前年比ベースで2指標ともに市場予想を大幅に上回る結果となりました。実質賃金は2022年3月の公表値以来、27ヶ月ぶりに前年比プラスに転換しています。名目賃金においても、4%を超える上昇は1997年1月以来の伸び率となっています。春闘の結果が反映され、ベースの基本給にあたる所定内給与が広範な業種において上昇したことが寄与していますが、それ以上に6月はボーナスシーズンであることもあり賞与などの特別給与が同7.6%増と大きく上昇し、実質賃金プラスに貢献しました。
【2】内容・注目点:基本給も右肩上がりであるものの、物価は高止まり
昨日(2024年8月5日)、経団連より、2024年の春闘の最終結果が発表され、大企業の定期昇給とベースアップを合算した賃上げ率は5.58%と1991年以来の33年ぶりに5%を超える内容でした。2023年の賃上げ率は3.99%であり、1.5%ポイント以上の上昇はかなりの高水準といえるでしょう。また、毎月勤労統計における基本給を中心とした所定内給与の上昇も着実に確認できた印象です。共通事業所とは継続標本と呼ばれ、同じサンプルによる賃上げ率を確認することで、景気動向をうかがうものですが、こちらは2.7%の結果で、前月に続き2ヶ月連続で2.5%を超え、ヒストリカルにみても高水準の結果でした。
一方で、実質賃金を算出する消費者物価指数(持家の帰属家賃除く総合)は一時期よりもピークアウトしているものの、足元ではエネルギー価格の上昇をうけて3%台で推移しています。今回の結果は賞与の影響が否めず、物価を差し引いた実質ベースの所定内給与は未だマイナスであると推察されます。
【3】所感:先行きの実質賃金は、伸び鈍化も上昇基調は続くと予想
今回の結果はボーナス等の特別給与が大きく寄与していることもあり、その反動もあって9月に発表される7月分の実質賃金は今回の水準から低下する可能性が高いでしょう。一方で所定内給与はトレンドでみても着実に上昇しており、賃金は下方硬直的であることもあって、トレンドは継続すると考えます。
また、物価についてはこの夏にかけて政府による電気・ガス価格激変緩和対策(※)が再び実施されることもあり、直近で上昇に寄与していたエネルギー価格が下押しされることが推測できるため、今回の結果の反動はあるものの、向こう数ヶ月の実質賃金は上昇基調であることが予想されます。8月6日に総務省から発表された6月の家計支出は前年比でマイナス1.4%と2ヶ月連続の前年比マイナスで推移しており、依然として消費が上向いていく様子はうかがえず、賃金上昇を起点とした消費への波及はまだ時間がかかると思われます。
(※)8月利用分(消費者物価指数では9月公表分)より反映
マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 山口 慧太