アップル恒例の世界開発者会議が6月に開催
アップル[AAPL]恒例のWWDC(世界開発者会議)が6月10日に行われました。アップルは毎年6月にWWDCを行なっており、このイベントで彼らが研究している新しい技術、製品についての発表を行ってきました。
2024年は「アップルのAI戦略」についてでした。実は、アップルはこれまでAIという単語をあまり使ってきませんでした。オリジナリティを求める同社は、世間で流行っているAIという単語を使うのが嫌だったようです。今回のWWBCのプレゼンテーションでも、通常Artificial Intelligence(人工知能)を意味するAIではなく、Apple Intelligenceという独自の単語を使っていました。
アナリスト達はアップルのAI戦略を高く評価
この発表の後、当日の市場の反応は芳しくなく、アップルの株価は上がりませんでした。しかし、その翌日6月11日のウォール街のアナリストたちは、今回のAI戦略により今後のアップルの成長を加速するだろうと判断したようです。なぜなら、翌日からアップルの株価は上昇に転じ、6月14日(金)に引けるまでに7.9%上がったのです。
アップルのように時価総額が巨大な場合、8%程度の上昇で2390億ドルの時価総額が増えたという計算となります。これは円貨ではおよそ38兆円です。日本の防衛費と比較すると2024年度分は7.9兆円のため、日本という国を1年間守るための予算のほぼ5倍のお金がたった1週間で創造されたことになります。
時価総額加重で構築されているS&P500指数は、この週(6月10日週)も1.6%上昇し、史上最高値を更新しました。この上昇分の3分の1がアップル株上昇によるものだったのです。
画期的な機能が続々とiPhoneに搭載
アップルについては、これまで株式市場のテーマになっているAIについて出遅れているという、ネガティブなイメージがありました。私はアップルほどの企業がそんなはずはないと思っていたのですが、実際アップルはあえてAIという単語を使わなかったこともそう思われてきた理由の一つだと思います。
アップルはiPhoneに2023年11月からパーソナルボイスと呼ばれる機能を搭載しました。アメリカでは最大で人口の9%程度の人が、声の問題を抱えていると言います。iPhoneの画面に表示されるランダムに選ばれた一連の語句を15分程度読み上げ、声を録音します。そうすると夜間その声は安全に処理され、自分の声に近い声ができあがり、文章を打ち込むと自分の声で発生してくれるのです。病院で同じことをしようとすると莫大なお金がかかるのだそうです。まさにこれを可能にしているのはAI、機械学習アルゴリズムのおかげだといいます。
今回の発表でアップルは、今後のAIの提供についてはOpenAIと提携するという戦略を発表しました。iPhoneに組み込まれたAI音声のSiriとの連携により、今後益々iPhoneの利便性が高まってくることになるでしょう。
実は、今回の発表で私が一番感動したのは、AI機能というよりもっと簡単なものです。iPhoneを使って音楽を聴いたり、電話で話すのに使用するブルートゥースを使ったエアポッズ(ワイヤレスイヤホン)という製品があります。これらに関連して、今回発表された新しい機能の1つですが、触らなくとも電話を受けたりできるようになっています。例えば満員電車で音楽を聞いている時電話がかかってくると、頭を縦に振る、または、頭を横に振ることで電話を取ったり、切ったりすることができるのです。些細なことと思う読者の方もいるかもしれませんが、こういう些細なことが少しずつ増えていくと、なかなかアップルから離れにくくなる、英語で言うSTICKINESS(粘着性)が強化されてくるのだと思います。
AI搭載がiPhoneの買い替えを促進か
これまでの例年のパターンですと、iPhone16とiOS18が2024年の9月に発表され、その数週間後には発売されます。iPhoneについては、売上のトレンドについて、サイクルがあります。みなさんも一度買うと数年間は買い替える必要はないですよね。私の知り合いでもiPhone13を持っており、まだ買い替える必要性はないと言っています。しかし、今回iPhoneについにAI機能が搭載される、ということで、ウォール街のアナリストたちは、これを機会に買い替えが起き、2025年、2026年に売上の伸びが加速するとみているのです。
現在世界中でiPhoneは14億台使われています。今回iPhoneにAIが搭載されるようになると、2024年の9月に発売予定のiPhone16、そして2025年のiPhone17への買い替え需要が起きるとみているのです。前回この買い替え需要が起きたのが、2021年です。この時は、4Gから5Gへのアップグレードがきっかけとなっています。その時に買い替えたユーザーが、この機会に買い替えると分析しています。
当時のアップルの業績を振り返ると、2019年に2.97ドルであったEPSは、2020年には3.28ドルへと前年比で10%の増益、2021年には5.61ドルと71%の増益となったのです。2021年の際は業績が上向くよりも前に、2020年には株価はそれを織り込み上昇し始めていたのです。今回の買い替えサイクルが起きるのであれば、株価と業績推移も過去と同様の傾向となるでしょう。